映画「阿賀に生きる」完成20周年
16mmニュープリントの作成にご協力をおねがいします!
「阿賀に生きる」は、過去の映画ではなく、東日本大震災や原発爆発を経験したわれわれが生きていく世界に、ひとすじの光を投げかけているのではないだろうか。
映画「阿賀に生きる」完成20周年
16mmニュープリントの作成にご協力をおねがいします!
「阿賀に生きる」は、過去の映画ではなく、東日本大震災や原発爆発を経験したわれわれが生きていく世界に、ひとすじの光を投げかけているのではないだろうか。
長谷川芳男さんとミヤエさん夫婦長谷川芳男さんとミヤエさん夫婦


 みなさまにはご健勝のことと存じます。
 さて、新潟水俣病が発生した阿賀野川を舞台にしたドキュメンタリー映画「阿賀に生きる」(佐藤真監督)は、今年、完成から20周年を迎えます。若き素人集団7人が、3年間の共同生活の中からつむぎだした作品は、有意の市民による製作委員会の支えと、多くの人々のカンパによってゴールを迎えたものです。
 20年前、早春のダビング作業を経て、4月に新潟県民会館にて完成記念試写会を開きました。登場する皆さんを招待したその日は生涯忘れることができません。
 その後、新潟県内各所で先行上映会が開かれ、秋には東京・六本木シネ・ヴィヴァンで当時としては異例のドキュメンタリー映画の劇場公開がなされました。また、山形国際ドキュメンタリー映画祭優秀賞やフランスのベルフォール映画祭最優秀賞ドキュメンタリー賞をはじめとした国内外の映画賞を数え切れないほど受賞しました。
 昨年の東日本大震災と東電福島第一原発の爆発以後、「阿賀に生きる」は新たな視点をもって見られているように感じます。映画に登場する人々はまさに「自然」を内包した生き方でした。今もたびたび上映され、今は亡き登場人物がよみがえります。
 上映環境の変化からDVD上映されることがふえました。しかし、今回、私たちはあえて、16mmフィルムでのニュープリント作成をみなさまに働きかけたいとおもいます。いまあるフィルムはキズが入り、完成当時のものはありません。現像所からも原版の引き上げを要請されております。今後を考えますと、16mmニュープリントをあげるならこれが最後のチャンスと思われます。
 なぜ、フィルムにこだわるのかというご意見も十分承知しながら、フィルムの形で今後50年、100年と保存するためにも、「阿賀に生きる」のニュープリントを作成することを、みなさまに呼びかけるものです。また、同時に現在デジタル上映方式として、HDカム方式が普及しつつあり、その対応も考えたいと思います。
 佐藤真監督が急逝して今年で5年。今年中には彼の遺影のまえで、ニュープリントで上映会をしたいと思います。
                                            2012年月5吉日
阿賀に生きる製作委員会代表  大熊 孝
阿賀に生きるファンクラブ代表 旗野秀人
阿賀に生きるスタッフ一同 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
小林 茂(撮影)、鈴木彰二(録音)、山崎修(撮影助手)
村井勇(スチール)、石田芳英(録音助手)、熊倉克久(助監督)
長倉徳生(カサマフィルム代表)、秦 岳志(「阿賀の記憶」編集)
矢田部吉彦(「阿賀の記憶」プロデュサー・東京国際映画祭ディレクター)

一口5000円または任意額のカンパに協力下さる方は以下のいずれかへご送金ください。
目標金額80万円!!
● 郵便振替座 00660-4-10904 加入者名 旗野秀人
● 銀行口座 太陽信用組合安田支店 普通口座 0162124 阿賀に生きる基金 事務局 旗野秀人
※銀行送金の場合は、相手方に表示されるのは氏名のカタカナ表示のみなので、必要に応じ別途ご住所等の連絡をお願いします。
餅つき名人 加藤作二さん かぎ流し漁で鮭をとった長谷川芳男さん


『阿賀に生きる』の意味を考え続けて
 『阿賀に生きる』が完成して20年が経ちました。この映画を初めて見た時は、何を主張しているのか漠然としか分かりませんでしたが、20年間各地で繰り返し上映されてきた経過の中で、20世紀が自然を克服・収奪してきたこと、そして21世紀は「自然との共生」以外に道がないことを認識させてくれました。この映画が、今後、この21世紀の間中、上映され続けていくために、ニュープリントを確保しておきたいと思います。私は、デジタル映像は映写に大変便利であるとは思いますが、フィルム映像の方がスクリーンに映しだされる美しさにおいて数段上だと感じています。是非、皆さんのご協力をお願い申し上げます。
大熊 孝 (阿賀に生きる製作委員会代表・新潟大学名誉教授)
長谷川芳男さんの田んぼ仕事を撮影するスタッフ。
左端、佐藤真監督
お茶を入れる舟大工遠藤武さん 「阿賀の家」でスタッフ全員の記念撮影


稲刈りをする佐藤真監督
■ 佐藤 真 監督 略歴(1957年―2007年)
青森県弘前市に生まれる。
東京大学文学部哲学科卒業。
1981年、『無辜なる海』(監督:香取直孝)に助監督として参加。
1989年から新潟県阿賀野川流域の民家でスタッフ7 名で共同生活をしながら撮影した『阿賀に生きる』を 1992 年に完成。ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭銀賞ほか4賞受賞、サンダンス・フィルムフェスティバル・イン・東京グランプリなど国内外で高い評価を受ける。
1996年(有)カサマフィルム設立。
他の主な監督作品
『水俣病ビデオQ&A』(1996)
『まひるのほし』(1998)
『SELF AND OTHERS』(2000)
『花子』(2001)
『阿賀の記憶』(2004)
『エドワード・サイード OUT OF PLACE』(2005)など
著作多数。映画美学校主任講師。京都造形芸術大学教授を歴任。


『阿賀に生きる』 あらすじ
 新潟県の大河である阿賀野川。監督を始めとする7人のスタッフがその川筋に住み込み、そこに住む人びとを3年間にわたって撮影した。山間の田んぼを守り続ける老夫婦、二百隻以上の川舟を造ってきた舟大工、名人と呼ばれる餅つき職人。みんな囲炉裏を囲めば季節の川魚や山の幸を前に、唄を歌い川漁の自慢話しに花が咲く。しかし、その一方でこの川と暮らす人びとが新潟水俣病の被害者家族であるという現実をつきつける。新潟水俣病という社会的なテーマを根底に据えながらも、そこからはみ出す人間の命の賛歌をまるごとフィルムに感光したエンターテインメント・ドキュメンタリーの傑作。

(株)シグロ発売『阿賀に生きる』DVD解説参照
(佐藤真監督 / 1992年 / 16mm / カラー115分)