平澤重信展

2月18日wed―28日sat

vol.453

 平澤重信の作品の主題は過ぎ去りしものたちへの郷愁である。描かれているのは白い煙が立ちのぼる煙突のある家、自転車を走らせる少年、庭の小さな樹や鳥や犬、家に向かう細い道、しかも時刻は夕暮れ、これらは作家の心象風景であり、我々の記憶のなかの心の風景でもある。これらのモチーフがユーモラスに空間に浮遊する作品は、工夫を凝らしたマチエールも美しく、観る人の心にやさしく響く。
 しかし、これらの作品が我々を惹きつけるのはそれだけでない。作家は我々に何かを語りかけようとしているのだ。それは豊かな物質文明の中で失われつつある精神への問いかけかもしれない。特に最近の作品からはモチーフが影を潜め、何か宇宙的な世界が開かれつつある。2014年の自由美術展出品作品を見ると、より抽象化が進み、黄色い画面の下から右へ、そして上へと白い煙が流れているが、これは作家の新たなメッセージに違いない。(企画 山下 透)

PROFILE
平澤重信(ひらさわ じゅうしん) 1948年長崎市生まれ。日本大学農獣医学部卒業。武蔵野美術大学油絵学科非常勤講師。自由美術協会会員。安井賞展、日本国際美術展、現代日本美術展、シェル美術展などに出品。90年に靉光賞受賞。紀伊国屋画廊(東京)、ギャラリーオキュルス(東京)、アスクエア神田ギャラリー(東京)、山口画廊(千葉)、あらかわ画廊(東京)などで個展。2005~06年朝日新聞「朝日 歌壇 俳壇」の挿し絵を描く。絵本に『ボクのじてんしゃ』(文・きむらゆういち/芸術新聞社)、画集に『時の三叉路 平澤重信作品集』(ギャラリーステーション)がある。

野中光正・村山耕二展

2月5日thu―15日sun

vol.452

 木版画もガラスも外部との、それは「版木」であったり「火」であったりするが、そうした手強い物質との闘いが制作の大きな要となる。和紙に押し付けた版木は、あるいは、炉から取り出されたガラスは後戻りできない。一瞬にして魂を作品に宿らせる。
 ガラスの村山さんは、制作に先立ち構想をスケッチしたりしない。ぶっつけで溶けたガラスをかたちにしていく。木版の野中さんもほとんどの作品を下絵なしで創る。いずれも生き生きとした命の流れを写すライブ・パフォーマンスなのだ。だが、これがなかなか難しい。心の嫌なものもきっと出てしまうからだ。自然のエッセンスをつかみ、美へと昇華させることができるとしたら、天与のセンスとナイーブさをおいて他にない。かつて「蝶のように舞い、蜂のように刺す」と評されたボクサーがいたが、力技をエレガントに、豪快に繊細に見せることができる点で、2人のコラボはいつも心地よく響きあうものがある。(企画 杜の未来舎ぎゃらりい 斎藤久夫)

野中光正
PROFILE
野中光正(のなか みつまさ) 1949年東京都鳥越生まれ。67年に絵画を、73年に木版画を始める。68~71年太平洋美術研究所、73~82年渋谷洋画(人体)研究所で描く。77年横浜国際船客ターミナルでの初個展。89年新潟県高柳町に移住、紙漉を学ぶ。91年かやぶきの家(高柳)で個展、同年東京に戻る。以後は、ゆーじん画廊、ギャラリーアビアント、ギャラリー枝香庵、高志の生紙工房ギャラリー、画廊Full Moon、砂丘館、新潟絵屋などで個展。

村山耕二
PROFILE
村山耕二(むらやま こうじ) 1967年山形市生まれ。96年仙台に工房「海馬」設立。2001年モロッコへ渡航。サハラ砂漠の砂を融かして作り出す「サハラ」シリーズの考案と研究開始。器をはじめ、オブジェや照明、ガラス素材の研究および造形物の企画・デザイン・制作を手がけている。 游ギャラリー(東京)、杜の未来舎ぎゃらりい(仙台)などで個展開催。07年モロッコ王国・王室へ作品献上品となる。11年宮城県芸術祭 (財)宮城県文化振興財団賞、13年「仙台ガラス」グッドデザイン賞など受賞。