中島尚子展「宝日誌」

3月22日mon―30日mon

vol.456

 誰もが中島尚子の作品を観て、まず感じることはその技術の高さだろう。対象物そのものを正確にとらえ、精緻な線で画面を作り上げる。その巧みな技のすごさにまず圧倒される。
 しかし中島のすごいところはその精緻な表現の奥にある。描かれている対象物そのものの背景を感じさせる力。そのものの色、匂い。たとえ無生物であっても、そのものの性格や感情、想い、生い立ちなどがしゅんしゅんと感じられるのだ。
 上手いと言われる作家はいくらでもいる。しかし作家が作家として生涯続けていくことは、技術に溺れず、自分の表現する世界からきちんと観る人の心に届く表現ができるか否かということだ。中島はそれができる作家である。観る相手にささやかな幸せを届けられる作家なのである。
 七年前の初個展以降、横浜を拠点に活発に個展発表してきた作家の、新潟での初展示となる。「宝物」をテーマに制作した木口木版画を中心に、掛け軸やドローイングも併せ約60点を展示する。(企画 外山文彦 アトリエZen + 西海由利 art Truth)

PROFILE
中島尚子(なかしま なおこ) 1981年神奈川県生まれ。2006年武蔵野美術大学造形学部油絵学科版画専攻卒業。08年「宝物図鑑[あ]~[こ]」と題し、ぎゃるりじん(横浜市)にて初個展。以降、art Truth(横浜市)をはじめ横浜・鎌倉を中心に個展、14年長府毛利邸(山口県下関市)にて個展開催。横浜市在住。

PHOTO:S市庭之図-犬」2014年 木口木版画 直径約20.0cm

■作家在廊予定日:3月22日(日)、26日(木)~30日(月)

■中島尚子木口木版画展:2月2日(月)~3月27日(金)会場:cafe 郭公
(長岡市東坂之上2-3-1磯部ビル2階 tel. 0258-36-4453 日祝休み)
老舗喫茶店内に、動物をテーマに制作した木口木版画4点を展示しています。

はるまち

3月12日wed―20日fri

vol.455

 まだ寒い3月に、グループ展を企画してみることになった。
 春をイメージして思い浮かんだ作家の方々に、〈なんとなく春っぽい絵で〉との趣旨で、お話した。グループ展では画家たちの絵が、個展のときとはまた違う口調で、言葉を交わし合う。つられて人も…
西野一男さんの木版画「赤マンマ」は、夏の花を描いた絵だけれど、頼んで出してもらった。美術評論家洲之内徹のエッセイ「赤まんま忌」に紹介された千家元麿の絵「森」(赤まんまが画中に描かれている)の描かれた吾野を、西野さんが訪ねて制作した小品で、唐津焼みたいな触感が素敵だ。西野さんとは20年ほど前、回想集『洲之内徹の風景』の編集に関った時知り合った。当時、まだ小さかった娘とよく読んでいた絵本「わたしのワンピース」の作者西巻茅子さんの絵も、絵屋に初めて並ぶ。数年前に新潟でお会いした時、絵を批評する言葉の適切さに驚いた。
…そんな感じで、久しぶりに開くお茶会でも、絵をめぐるいろんな話に「花の咲く」場所になるといい。(企画 井上美雪・大倉 宏)

出品:
浅野紋子・井田英夫・いまきみち・菅野くに子・長尾玲子・西野一男・西巻茅子・西村繁男・野中春花・森 敬子・渡辺リリコ

PHOTO:(左)西野一男「赤マンマ」木版画 (右)森敬子「おはよう」油彩

平野照子展 ー睡れる森ー

3月2日mon―10日tue

vol.454

 平野さんの作品にいるひとは、全身から無表情を発している。何やらたくさんのものをかかえていて、待っているようなそのひとは、ときには舟の上に、草の傍らに、穴の前に佇んで、静かなときを過ごしている。ひとと場所から成る土の造形を眺めていると、景色が広がり、遠くへ行くことができた。ある日、陶芸家でギャラリ―のオーナーでもある平野さんがお店の案内を持ってきた。そこには切り絵のあのひとがいて、舟に立っていた。近年の作風を示すひとつのキャラクターにもなっていたのだ。
 近作を見せてもらったら、ひとはうっすらと表情を浮かべていた。目鼻立ちがくっきりとし、体に植物を思わせる部分がある。どきっとしたのは、まだ素焼きだった手や羽を見た時も。温めていた旧作の種、新作の種シリーズと新しいひととを一室に並べてみることにした。平野さんが辿り着いた場所を照らしてみる。(企画 井上美雪)

PROFILE
平野照子(ひらの しょうこ) 1972年宮城県生まれ。97年~坂爪勝幸氏に師事。個展は03年ギャラリー炎舎、04・05・06年fullmoon upstairs、07・12年新潟絵屋、08・10・12・13年mu-anなど。松本クラフトフェア、工房からの風に出品。09年独立・築窯(ceramic studio apetpte)、11年ギャラリーショップ草舟開店。新発田市菅谷在住。

平野照子

「睡れる森」陶 13.0×15.0×h30.0cm

■作家在廊予定日:3月2日(月)、6日(金)~9日(月)

■日本酒の会 金升酒造 篇:3月6日(金)19:00~20:30 
会場:新潟絵屋展示室 作家を囲み、蔵元の解説を聞きながらいくつかの銘柄を味わいます。
(2,500円/要予約/限定12名/吉川酒店+新潟絵屋共同企画)