フジタ ヨウコ展

7月22日wed―30日thu

vol.468

 フジタヨウコの「雲」が、帰ってきた。それも確実にパワーアップして。と、村上の仕事場の隅に置かれた大きな「雲と雨と雷」を見て興奮した。何の「パワー」がアップしたのか、と自分に問い、リアリティーだと自分に答えた。
 現実から実感を消去すると「超現実=永遠の静寂」があらわれると書いたのは古賀春江だが、フジタの雲は、陶器であり雲であるという「超現実」側から滑り出した。雲上の家や木はその符牒だった。仮想現実の氾濫する現代に、それでもありふれていない、と感じさせたのは、雲の、雨のふしぎなリアリティーだった。
 雲が雨の大柱を抱く「雨のあと」はありえない度を増加させつつ、雲や雨のリアリティーをそれ以上に高めてきた。餅のような、お好み焼きのような、泥のような、溶岩のような、重層的な視覚的触感満載の雲。巨木の幹と化した雨もまさに夏の、晩秋の雨だ。超現実に消されたはずの実感が、雷のごとく挿入され「瞬時の動」があらわれてきた。(企画 大倉 宏)

PROFILE
1995年女子美術短期大学卒業。96年同専攻科修了。同年坂爪勝幸氏に師事。2000年新潟現代美術リレー展、08年越後の花鳥画展(農舞台/十日町市)、11年女子美術大学アートミュージアム「予期せざる出発」出品。個展は、03・04年ギャルリー炎舎(新潟市)、05~10年(毎年)11・13年新潟絵屋、09年ギャラリーいなば(東京)、10年ギャラリーさやけ(新潟市)、12・14年ギャラリ―彩(新発田市)など。09年長三賞、13年日本陶芸展入選。村上市在住。

PHOTO:「雨のあと」2015年 陶 40.0×100.0×h71.0cm

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眞島美代子展

7月12日sun―20日mon

vol.467

 絵屋では二年ぶり、三度目の個展となる。一回目は眞島さんが手がけてきた焼き物のカタログ的な展示。二回目には家や塔をモチーフにした多用途のインテリアクラフトを提案した。今回はどうだろうと長岡を訪ねた。
 未焼成ながらたっぷりとしたボール状の器形や、部分でも単独でオブジェになり、積み上げれば塔にもなる箱型の立方体が用意されていた。構えたところのない大らかな造形で多用途性もありそうだ。
 クライアントの意向におもねらず、自由で素直な自分が表現された作品で展覧会をやりたいという眞島さんの気持ちを伝える。
 制作上のコンセプト「委ねる使用法」も装われている。
工夫しながら使い続け、身辺に置いて欲しい作品だ。(企画 小見秀男)

MASHIMA MIYOKO PROFILE
眞島美代子(ましま みよこ)長岡市生まれ。2006年長岡市内に「みよしの窯」開窯、陶芸教室を始める。2008年第40回日展入選(09・10・11・12・13・14年同)、第46回現代工芸新潟会展県知事賞、09年第64回新潟県展奨励賞、11年第50回日本現代工芸50回記念展現代工芸賞受賞。11・13年新潟絵屋にて個展。その他グループ展多数。現在、日本現代工芸美術家協会本会員。

PHOTO:「trace」2015年 陶 10.0×15.0×h55.0cm

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しんぞう展

7月2日thu―10日fri

vol.466

 今回出品の墨絵連作「神の犬」のいわく言いがたい魅力はなんだろう。
 犬の表情もそうだが、墨の広がり、線もいい。近作アクリル画の名付けようのない色がごっちゃり混ざった溶岩にも引かれる。画家が絵の前で語るエピソードにも驚かされるけれど。
 しんぞうの絵はしばしば制御しがたい感情やとりとめのない思考から始まるらしい。親に愛されない悲しみに一年川原で泣き続けたことのある画家は、今も感情の奔流を生きているようだ。一見汚く見える色は、その表出のようでもあるが、それだけでは第三者の目は揺らせまい。
 表出が表現に、汚いが美しいに変わる一線があり、そこに立つ犬が越境者を威嚇する。その番犬が「神の犬」なのかも。(企画 大倉 宏)

PROFILE
しんぞう 1974年横浜市生まれ。武蔵野美術大学油絵科卒業。個展は、2007・08・09・11・12年新宿眼科画廊(東京)、09・10・11・12・13・14年DAMギャラリー(韓国)、12年砂丘館「あなたの心の裏の河」(新潟市)、13・14年新潟絵屋など。そのほか09年「大地の芸術祭」に出品。芸術道場GP(グランプリ)銀賞、第29回損保ジャパン美術財団選抜奨励展入選、第44回神奈川美術展入選など受賞。装画に「臨床の詩学」(春日武彦・著/医学書院)がある。新潟市在住。
http://www.sinzow.com/

PHOTO:「神の犬」2014年 墨/和紙 16.0×20.0cm

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