ギャラリー&ミュージアムマップ 2015年10-11月号

私たちは、画廊や美術館を巡るひとが増えるにはどんな環境が必要か、考え続けています。
2008年創刊、毎月無料配布の情報冊子です。

新潟島とその周辺のギャラリー&ミュージアムマップ | gallery & Museum Schedule 2015

10月20日(火)- 11月25日(水)

ギャラリーマップ2015年10月-11月

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ギャラリーマップ2015年10月-11月

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News 2「みつけ市民ギャラリー」

見附市が公募した「みつけ市民ギャラリー」の指定管理者(2015.11~2018.3)に、新潟絵屋・新潟ビルサービス共同企業体が選出されました。オープンは2016年3月頃を予定。現在は建物の改修工事中で、具体的な活動準備に忙しくなってきました。新潟絵屋運営委員の小見秀男(館長)と企画委員の外山文彦が、主に企画・運営に携わります。

小林春規展

10月22日thu―30日fri

vol.476

 最近、運転中にいろんなものがうようよ宙に舞っているのに気付いた。黒い点もある。びっくりして眼科で診てもらうと網膜に異常はなく、目そのものの内部の傷が見えているだけなので、「見ないように」して下さいと言われた。そんなことができるのか――と思ったけれど、1週間後には気にならなくなった。
 小林春規の新作「飛行機雲」の水色の空にも、微細な「うようよ」が漂っている。板目木版画特有の刷りむらだ。そう意識して見ると、どの小林の版画にもそれはあるのだった。小林の風景がカメラの画像より、確かに人間の目が見るものに近いと感じさせるのはそこかも知れない。老いた目はおのれのよどみを透かして外の世界を見る。「見ないように」させられたよどみが、たぐり寄せ、目にすっぽり入りこんだ空を、見えない飛行機の音が通過していく。(企画 大倉 宏)

小林春規(こばやし はるき)
1953年新潟県水原町生まれ。幼年時より木版画を始める。18才で初の個展後、京都の表具師の内弟子となり、表具の仕事を続けながら版画制作を続ける。90年新潟県笹神村(現阿賀野市)に転居。70年より日本アンデパンダン展、平和美術展に出品。70年より日本アンデパンダン展、平和美術展に出品。平安画廊・ギャラリー岡崎・ギャラリーかもがわ・ギャラリークリエート洛(京都)、みずさわ画廊(東京)、考古堂ギャラリー・ギャラリー点・ギャラリー彩・ギャラリー郷・ギャラリー柳本・アトリエ新・小さな美術館季・ギャラリー松ぼっくり・画廊愛・浜つばき・砂丘館・画廊Full Moon・新潟絵屋(新潟)などで個展。

PHOTO: 「飛行機雲」2015年 木版画・紙 27.0×37.5cm

長谷川徹展

10月12日mon―20日tue

vol.475

 1年ぶりに訪ねると、長谷川徹はいつもの座椅子に座り、脚を左右に揺らしていた。脇に描きたてらしい絵が3点。洗面器に青いアクリル絵具が水に溶いたままあった。写真を撮り、話をしているうち、ベッドの奥の本棚に、サイードの『晩年のスタイル』があるのを見つけた。それを個展までとの約束で借りてきたが、まだ読んでいない。
 67歳の長谷川を、晩年と言うのは早すぎるかも知れないが、市中の山居のような暮らしぶりが今後も変わらないとすれば、そう呼んでもいいのかも知れない。絵は、それでも1年毎に変化して、西欧中世の木彫のキリスト像にますます似て来た長谷川の体のように、肉より骨格が透けて見えるようになってきた。若かった長谷川の絵を懐かしむ私もいるけれど、晩年のスタイルをあらわにしつつある今も興味深い。(企画 大倉 宏)

長谷川徹(はせがわ とおる)
1948年新潟市生まれ。69年武蔵野美術大学油絵科中退。以後、新潟で創作活動に入る。78〜2001年絵画研究所アート・ノバを主宰。主な個展は、77〜01年アトリエ我廊、83・86年羊画廊、94・03・13年たけうち画廊、04・06年楓画廊、05年炎舎、03・10〜14年新潟絵屋、13年蔵織(たけうち画廊・新潟絵屋・蔵織 3会場同時開催および画集刊行)にて個展。そのほか個展多数。92・94 年安井賞候補。96年感動創造美術展グランプリ受賞。新潟市在住。

PHOTO: 「WORKS」2015年 アクリル・板 84.0×59.4cm

華雪 書展「由」

10月2日fri―10日sat

vol.474

 「二年前に南相馬に行って、そこで、旅館の宴会場にそのまま残されていた黴びたみかんを見た」華雪は、今回の書展の字を「由」としたいと言ってきた。
 由は不思議な字だ。自由とか、宙とか、抽象の抽にも「由」が入っている。「果実が熟し、中身が油化して空洞になった様」とのこと。最初に送られてきた2点の由のひとつは黒々して、ひとつはこすり消されかけていた。動かないもの、動けないものが自分に語り、叫び、内響する声の気配がしみだしているような気が見ているとする。
 震災から4年半。かつて人が住んでいた土地から人が消え、人でないものだけが残された場所ができた。人が置いた宴会場のみかんは、みかんの形の黴となり、その形をみかんと見る人の不在の世界に、立ち続けている。(企画 大倉 宏)

華雪(かせつ)
1975年京都府生まれ。新潟では2004年以来、ほぼ毎年展示を行い、近年には13年「人とひと」(室礼/岩室温泉)、「動/物」(新潟絵屋)、14年「家を巡る」(新潟絵屋)などつながりが深い。刊行物に『石の遊び』(平凡社)、『書の棲処』(赤々舎)、『ATO 跡』(between the books)など。『コレクション 戦争×文学』(集英社)、『石原慎太郎の文学』(文藝春秋)、『木の戦い』 (詩:タリエシン/エクリ)をはじめ書籍の題字も多数手がける。「ただようまなびや 文学の学校」、〈字を書く〉ことを軸としたワークショップを各地で行い、華道家・舞踏家・詩人らとのコラボレーションも多い。水と土の芸術祭2012出品。東京都在住。http://www.kasetsu.info

関連イベント
■ 10/4(日)15:00〜 堀川久子独舞 華雪書展会場にて
1,000円/定員20名/要予約・メールまたはTel.Fax等で新潟絵屋へ

PHOTO: 2015年 墨・紙 26.0×20.0cm