三瓶初美 展

 3月22日tue―30日wed

vol.488

 三瓶初美の絵を昨年見て、画面の質感に独特のものを感じた。しっとりとした気配も感じた。しばらくたって、夜ふけに、「柔らかな扉」という絵を見ていたら、池に小雨が落ちるような音が聞こえ、 絵具が濡れて見えた。
 ところが絵に目を近づけると表面はカサカサしていて、かわいている。近づいた分だけ、しめりけや音が遠ざかる。目を閉じるとそれは甦り、開けると、薄日に照らされたような色の地層がかきまぜられて、かすれたり、おぼろになったりして広がっている。こちらが動くと、絵のなかで見えない何かが動く。とらえがたい、生きものが棲んでいるかのようだ。
 絵屋の空間にそれが放たれて、どうなるか、楽しみだ。 (企画 大倉 宏)

三瓶初美(さんべ はつみ)
東京都生まれ。上野の森美術館大賞展、川の絵画大賞展(加古川)、風の芸術展(枕崎)、熊谷守一大賞展、上海アートフェアに出品。2013・15年ギャラリー島田deux(神戸)で個展。

▶みるものとよいところ 会場のようす

PHOTO: 「風を歩く」2015年 アクリル・キャンバス 22.7×16.0cm

小島ガラン日本画展

 3月2日wed―10日thu

vol.486

 小島我乱がこの数年描きためていたという山の絵を一堂に見て、時間を忘れた。まぎれもない山の絵なのだが、勝手が違う。山の絵であって山の絵でないような感覚を左見右見した。
 よく見る山の絵は風景だ。実際に山を遠望近望するときの空間の広がりがある。これらにはそれがなく、代わりに押し入れに入って戸を閉めたときのような、閉塞感と解放感を感じるのだ。どうしたことか。
 まるで襖の裏の闇のスクリーンに浮かびあがった幻覚の山を見るようで、特に影には異様な迫力を感じる。
 小島はこれらをすべて実際にその山まで出かけて描いたというのが、おもしろい。いいぞ、と思って、これらの絵で個展を開かせてもらうことにした。(企画 大倉 宏)

小島ガラン(こじま がらん)
1958年名古屋市生まれ。本名敏裕。中学進学を前に白士会の加藤正音先生に師事。白士会会友、中部清新美術会創立会員。82~83年イタリア留学。95・2001・11・15年名古屋丸栄デパート、96年東京銀座 「風童門」、2000年トミオカホワイト美術館ギャラリー、八海山地ビール館、01・03年北方文化博物館屋根裏ギャラリー、05年新潟市ジョイフル2ギャラリー、08年アートサロン環、新潟県立植物園、08・10年新潟絵屋、14・15年エムスタジオで個展。絵本に 『おとうさんといっしょ』(文・工藤直子/小学館)がある。新潟市在住。

▶みるものとよいところ 会場のようす

PHOTO: 「ユングフラウ ヴェンゲンより」2014年 顔料・紙 64.5×91.0cm