2016年7、8月

 7〜8月は全企画展でギャラリートークを開催しました。片桐翠展のトーク(7/22 写真)ではイギリス留学時代から始めたアニメーションも上映、今も好きだという「赤毛のアン」やベン・シャーンのことなど片桐さんの高変さ値の背後のさまざまが話題となりました。井田英夫展(7/8)では話題の大作「音戸の夜」の制作時のエピソードなどを聞き、坂爪展(7/15)では祖父から受け継いだ庭への興味が、長期入院した京都で、病院を抜け出し禅寺の庭を見て回ったことで再燃、新しい制作モチーフとなったこと、そしてミーヨン展(8/6)では十数年の間に撮った写真を、初めての子を亡くし、ひとりで過ごした日々の後で見直すことから写真集『Alone Together』が誕生したことなど、それぞれのドラマに接することができました。ほか神戸のギャラリー島田での蓮池もも展でもトークがありました(7/2)。白い壁の「赤と青」は、新潟絵屋の展示とはずいぶん違って見えました。(大倉宏)

井田英夫

↑PHOTO:井田英夫展トーク

↓PHOTO: 坂爪勝幸展トーク

坂爪勝幸 トーク

片桐翠 トーク

↑PHOTO: 片桐翠展トーク

↓PHOTO: ミーヨン展トーク

ミーヨン トーク

PHOTO: ギャラリー島田での蓮池もも展トーク

蓮池もも 島田

ギャラリー&ミュージアムマップ 8/20~9/25 2016

私たちは、画廊や美術館を巡るひとが増えるにはどんな環境が必要か、考え続けています。
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新潟島とその周辺のギャラリー&ミュージアムマップ | gallery & Museum Schedule 2016.7-8

2016年8月20日(土)- 9月25日(日)

BAKU 斉藤 写真展 時の向こうがわ

8月21日 sun ― 30日 tue

vol.502

作家在廊予定日:会期中毎日

 詩人の斎藤健一さんの企画でBAKU斉藤の写真展「アンコールの顔」を開催して7年になる。
 アンコール遺跡ではない写真展の話は、その会期中に、斉藤さんからあった。画像でそれらを見せられ、とまどったのは、同じ写真家の仕事とはすぐに飲み込めなかったせいで、7年はそれをこちらが、飲み込むために要した時間だったかもしれない。
 当惑は、BAKUのアンコール写真をリアリズムだと見たせいだった。世界中で展示されるそれらは、アンコールの像そのものの力で、見る者を印象づける。しかし実際に立体物を画廊で展示する経験を重ねると、立体の実力=そのものの力を、平面である写真に立ち上がらせる難しさの並大抵でないことが分かってくる。熱帯の森で、大きな足場を組み、大型カメラで野外の巨像を撮影する。それだけでも大変だが、しかしそれだけでは、巨像の力は伝えられない。そこで生きたのが、今回展示する写真などで、BAKUが時間をかけて蓄積した写真を作る、構成する経験だった。アンコールの像は、足場の上のカメラの背後に立つ、写真家のそのプリズムを通過して、そのものの力を、写真の中でもう一度、獲得したのだ。(企画 大倉 宏)

BAKU 斉藤(バク さいとう)
1948年新潟市生まれ。94~2005年日本国政府アンコール救済チームや他のミッションに参加、アンコール遺跡群の尊顔を撮りはじめる。06年カンボジア王国政府より「サハメトライ・トッパデット級勲章」を受章。2016年エコグローバルミュージアム(カンボジア・プレアヴィヒアにある博物館)にて常設展示。主な著書は『アンコールの神々-BAYON』(小学館)、『アンコールと生きる』(朝日新聞社)、『幻都バンティアイ・チュマールの神々』(梧桐書院)、 『カンボジアの宝石箱』(連合出版)、『初めてのアンコール』(草土文化出版)等。

▶みるものとよいところ 会場のようす

PHOTO: 「Visitants 1 (Accomplished was incident)」1986年 伊豆大島・裏砂漠 カラー

■ 8/21(日)18:00~ BAKU斉藤ギャラリートーク 聞き手:大倉宏 500円/予約不要

Mi-Yeon 写真展 Alone Together

8月2日 tue ― 11日 thu,holiday

vol.501

作家在廊予定日:8/2・3・6・7

 「あっ、」という感嘆を何度も飲み込んで彼女の写真集を見続けた。映された物質との距離感、微妙なフォーカス、観る者を誘いに来る強くてやさしい肌合い。…経過とともに観えてくる…溶けて、自己同一化する他者。ふれあう気質の多様な調べ、空間の基調を聴き取る写真家と、その絶妙な間隔に浮遊する被写体。くりかえしのリズムに、ただよう空気は時間のベクトルを自由に変化させた。同じ地平に、点滅する無数の次元。そこにある闇と光こそ、真実。…ヒト、人、人間…。人間とモノ、風景、事象。出会いと、さまざまな経過と、確かな存在のうつせみ。彼女の眼の前で変容する一本の草も、娘の成長も、そして、われと汝に象徴的なハトの飛翔も、ミーヨンの視座に組み込まれて物語となった 。
 作家の感性のバルブから解き放たれる自由な発想が、柔軟な写真世界で、たわわに実った果実として収穫される。そんな時間の推移が、絵屋の空間に現出する。ここから試されるのは観る者としてのあなたと、作品の肌合い。(企画 石井仁志)

Mi-Yeon(ミーヨン)
韓国ソウル市生まれ。1988年渡仏。パリ写真学校icart photoで写真を学ぶ。個展は、2000年「EXISTENCE」、01年「I was born ソウル・パリ・東京」、02年「2歳の瞬間(とき)」、03年「中年ビューティ」、13年「Alone and Together」(以上まで東京)、15年「Alone Together」(ソウル)、15年「I and Thou」(パリ)等。主な出版に写真集『よもぎ草子―あなたはだれですか』(窓社)、『Alone Together』(kaya books)、エッセイ・写真『いまここにいるよ』(偕成社)、『I was born ソウル・パリ・東京』(松柏社)等がある。2015年より長岡造形大学非常勤講師。東京都在住。

▶みるものとよいところ 会場のようす

PHOTO: 「Series Alone Together #26」2011年 モノクロ

■ 8/2(火)19:00~ 日本酒の会 ミーヨンさんを囲んで、恩田酒造(長岡市)のお酒を聞き酒します。2,500円/定員12名/要予約

■ 8/6(土)18:00~ ギャラリートーク ミーヨン・石井仁志 聞き手:大倉宏 500円/予約不要
関連情報 7/23~30…ミーヨン写真展「よもぎ草子ーあなたはだれですか」
会場:ギャラリーmu-an(長岡市呉服町2-1-5 0258-33-1900 11:00~17:00)