Rain ―福井祐介 展

11月12日sun―20日mon

vol.542 作家在廊日:11/12~20

 「落雷は〈放電〉という現象で、放電は〈絶縁破壊〉によって生じる。福井祐介の線もまた、紙の峻拒を破壊し、貫通するすさまじいエネルギーの 疾走だ。つらぬくものと、つらぬかれるものがこすれ、しぶきを、噴煙を、発するように、集中豪雨の雨粒が空気に発熱し、水蒸気をまき散らすように、空間そのものが大きな帯電体となって私の目を襲い、撃つ。
 福井は富山に生まれ、二十歳からハンガリーに住み、生活を続けてきた。小さな素描にさえ壮大なスケールをひそませる、素晴らしい画家を、新潟で紹介できることを喜びたい。
初の試みとして、会期の始まる前日の夕べにオープニングを行い、福井の仕事を長く見続けてきた塩田純一氏(新潟市美術館館長)にお話をうかがう。会期中の16日の夜には福井氏から「ハンガリーの美術」の現況ついてもお話を聞かせていただく予定だ。
(企画 大倉 宏)

福井祐介

福井祐介 (ふくい ゆうすけ)
1971年富山市生まれ。91年よりハンガリー、ブダペストに滞在。98年ハンガリー国立ブダペスト美術大学絵画科修士課程修了。95~2006年ハンガリーヤングアーチスト協会会員。98年よりハンガリークリエイティブアーチスト協会会員。ハンガリー、オーストリア、日本などで個展、グループ展多数。パブリックコレクションーハンガリー国立ブダペスト美術大学、佐久市立近代美術館、Kiscell美術館(ハンガリー)など。
▶ホームページ

PHOTO(上): 「Rain. 2013-84」2013年 墨/紙 62.5×48cm
PHOTO(下): 「Rain. 2012-61」2012年 墨/紙 62.5×48cm


関連イベント

◆ 塩田純一 (新潟市美術館館長)のトークとオープニングパーティ 11.11[土] 17:00〜

◆「ハンガリーの美術のいま」 お話 福井祐介 11.16[木] 18:30〜

いずれも申し込み不要 参加費500円

渡辺隆次 展

11月2日Thu―10日fri

vol.541 作家在廊日:11/2~5(予定)

 「宮廷画家」という言葉が、渡辺隆次の新作を見て、浮かんで、びっくり。
 絵に漂う不思議なエレガンス(優雅さ)に反応してのことらしい。部分的には、おなじみの胞子紋(置かれたきのこが紙にこぼす胞子の紋様)や、数年前から登場したスパッタリング(霧吹き技法)によるクリップや鍵のシルエットに、木の葉や実や渡辺隆次風の有機的かつ無機的な文様が描き込まれた画面だが、それらが渾然と解け合い、なめらかで、優雅で、美味な空気がかもしだされている。
 渡辺が八ヶ岳の麓の山里に暮らして40年。豊かな自然環境に「開発」が進行し、心痛むことも多かったと聞く。けれどそこはやはり宮廷でもあった。美しさと豊かさに支えられた空間という意味である。山里宮廷のその濃厚な香りを見事に放って、絵がみやびに輝いている。
(企画 大倉 宏)

渡辺隆次

渡辺隆次(わたなべ りゅうじ)
1939年東京都八王子生まれ。武蔵野美術学校(現武蔵野美術大学)卒、東京学芸大養護科修了。77年から八ヶ岳麓のアトリエで制作を続ける。個展多数。92~99年武蔵野美大特別講師。99~2003年武田神社(甲府)菱和殿天井画、04~05年同神社能楽殿の鏡板絵を制作。著書に『きのこの絵本』『山のごちそう』『八ヶ岳 風のスケッチ』(筑摩書房)、『水彩素描集』(深夜叢書)、『花づくし 実づくし―天井画・画文集― 〈一〉〈二〉〈三〉』(木馬書館)、『山里に描き暮らす』(みすず書房)がある。新潟絵屋では06年12月・09年11月・13年10月に個展、2013年は角田山妙光寺と2会場にて同時期開催。近年は依頼を受けて制作した巨大なうなぎの絵馬を神社に奉納した。

PHOTO(上): 「胞子紋」2014〜16年 ミクストメディア/紙 34.8×23.8cm
PHOTO(下): 「胞子紋」2014~17年 ミクストメディア/紙 34.8×23.8cm