n e w s p a p e r
2010年8月10日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

個々の作品に内なる厳しさ

N氏コレクション展 part7 オマージュ アトリエ我廊

2010年8月10日〜15日 新潟市美術館 市民ギャラリー


大倉宏(美術評論家)
ヴォルス「壁の間」1938年 水彩 31.5×23.5

 
 「現代美術」のコレクションN氏(新潟市在住)は、コレクションの一部を数度にわたり新潟で公開してきたが、7回目の今回は、1977年から25年新潟市で活動したアトリエ我廊へのオマージュ展。
 N氏が同画廊を通してコレクションした絵画、版画作品で構成される会場は、品格ある空気に、生命のリズムを弾ませて、心にしみる。
 アトリエ我廊は新潟に「公募展美術」とは違う「個」に立脚した美術活動を根付かせようとした。美術を欧米の20世紀美術の流れの中で見る視点を教え、若い作家の「個展」による発表の場を作り、支援するとともに、欧米の美術を視察するツアーも多く開催した。
 N氏は画廊の常連となり、海外の美術や新潟の現代美術家の作品を収集する。展示された絵や版画や立体を見ると、紹介されたものを、そのまま受け入れたのではなく、あくまで自己の目のフィルターを通し、感応したものをコレクションに加えていた。見る側もまた「個」に立脚し、「収集」という活動をしていた。そこが面白い。
 コレクションの展示が興味深いのは、個々の違う作品に、違う水に映る同じ月のような、コレクターの目が透ける点だ。ヴォルス、クレー、ブラック、デ・クーニング、加納光於、草間弥生という「20世紀美術」の国内外のスターに、布川勝三、長谷川徹、栗田宏という新潟の美術家を加えた作品に浮かぶのは、時によってはさりげない外観に潜む、内なる厳しさ、緊張感を失わない精神の躍動だという気がする。
 後者の、個に立つがゆえに引き受ける孤独の強さと深さという、普遍的な力、すぐれた質も確認することができる。


アトリエ我廊の活動

第一期 1977(昭和52)―1985(昭和60)年
イタリア軒近くのサンビルド3F(新潟市中央区西堀通7)にアトリエ画廊開設。
■現物、本物を見よう――20世紀美術の紹介、展示
■とにかく発表しよう――現代美術系若手作家の育成
■聞く、語る、勉強しよう――美術講座の定期的開催
■世界の作家と語ろう――海外の美術状況視察ツアー
開廊記念企画「ピカソ素描展」
第二期 1985(昭和60)―1998(平成10)年
アトリエ画廊をアトリエ我廊と改称し、三越となりのコーリンビル2F(新潟市中央区西堀通5)に移転。
加治川村(現 新発田市)「38°線モニュメント」をはじめ、秋田、東京、千葉、新潟での環境彫刻設置に参画。
第三期 1998(平成10)―2002(平成14)年
県庁近くの出来島(新潟市中央区出来島2)に移転。
若手作家によるインスタレーション主体の画廊として活動。
2002.1.9―14 第48回海外美術視察ツアー
       「ニューヨーク美術と建築 グランドゼロの確認」
2002.3.12―21 「ラスト・ショウ 我廊学原論」をもって閉廊。
 
1994.9.27―10.9

ボイス展 マルチプル

2000.2.15―3.12

身体学展3 『危険な境界』

2002.2.26―3.10

芸術強制終了展
  こわす・つむぐ・つなぐ