■会 場:新潟市美術館 2階講堂
■参加費:500円(資料代)
■定 員 120名(要予約)
■お問い合わせ・申込み:
    新潟絵屋
  (tel.025-222-6888)

片山 健
(かたやま けん)

1940年東京生まれ。武蔵野美術学校商業デザイン科卒。画家、絵本作家。主な絵本に『ゆーちゃんとみきさーしゃ』『おやすみなさいコッコさん』『だーれもいない だーれもいない』『コッコさんのおみせ』『コッコさんのともだち』『タンゲくん』(講談社出版文化賞絵本賞)『きつねにょうぼう』(長谷川摂子文)。『たのしいふゆごもり』(片山令子文)『ぼくからみると』(高木仁三郎文)『おなかのすくさんぽ』(以上福音館書店)、『どんどん どんどん』(文研出版)など。画集に『いる子ども』(パルコ出版)『夜の水 朝の水』(架空社)などがある。

 
  20世紀後半の日本は、絵本というジャンルで、優れた遺産を生んだと思う。遺産とは、今後も長く受け継がれていくであろう質と水準を言う。例えば中川李枝子・山脇百合子『ぐりとぐら』、林明子『こんとあき』、スズキコージ『サルビルサ』は、それぞれの時代の空気を吸いながら、その時代を越え、子供と大人の心をとらえる魅力をそなえるに至った傑作である。そこに片山健の『タンゲくん』『コッコさんのともだち』『きつねにょうぼう』などを加えると、戦後の日本の絵本の、私のトップ10の半ば以上が揃うことになる。
片山健のすごさは、山脇や林や西巻茅子のような女性の絵本作家たちが切り開いた、明るく詩的なユートピアの空気を、さまざまな軋みが音を立て続けた、戦後の現実の世界に接続させる奇跡を作り出したことだ。漫画では少年向けと少女向けとに早くから分岐した荒ぶる力と美しさとが、片山の絵本では交互に浮上しながら、やがて一本の縄のように綯われる。『きつねにょうぼう』の油絵の具のタッチは荒々しい。そして雌狐ならずともはっと息を呑むほど、美しい。『タンゲくん』を読むと文化的に引き裂かれた戦後日本が、そこに生まれた子供たちには、そのままで美しい詩の時代でもあったのだと気づかせられる。
表題は、そんな片山健の絵本を思う時、ふと浮かんだ言葉だが、今回のトークのタイトルは「それで結構です」と片山さんから連絡をいただいた。「根拠はありません」とも。
どんな話になるのだろうか。わくわくしますねえ。

 大倉 宏(美術評論家/新潟絵屋運営委員代表)