News Paper
2008年4月9日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

淡い墨色がかすかに匂う花

小島伽藍展 ―花―
(2008年4月12日〜20日 新潟絵屋)


上原誠一郎(アートディレクター)
「椿(都鳥)」
2007年 顔料
32.5×52.5cm


 春をうたう「花」をテーマにした展覧会である。といっても、桜やツツジなどの春の花に加えて、ボタン、ショウブ、フジ、ハスなどの初夏から夏の花々が集う。未発表の逸品ぞろいだ。
 小島は1958年名古屋に生まれ、ここ新潟市に移り住んで約10年になる。中学進学前に日本画の手ほどきを受け、以来スケッチブックと絵筆を友として、人物、風景、老木、花、街など幅広いテーマで描き続けてきた。
 また二十代初めに2年間のイタリア生活を機に、その後幾度もヨーロッパ取材旅行を行い海外風景や人物などの秀作も多い。
 このたび、色とりどりの花の連作を鑑賞しつつ、小島の花のベースは墨色それも淡墨にあることをあらためて思う。
 花弁の色使いには、ゆらぐような滲みやぼかしがあり、そのもっと奥に淡い墨色がかすかに匂う。葉の一枚に目を移せば、葉脈の一本一本に微妙な濃淡や色彩の変化があり、その表情はシンフォニックだ。
 ふと気付くと、客体のむこうに地色のオーカー系や墨色が透けて見える。
 デジタル画像の明快な色彩や形状に慣れ親しんだ私たちは、このような日本画独特の「すかし」のありように、時に一種の戸惑いや不安を覚えるかもしれない。けれども画面は柔らかな緊張感に満ち、写生そのままに押し出した構図にいささかの気負いはない。見るものを清澄な気分へといざなうことだろう。