News Paper
2010年5月1日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

強い生命感と不思議な絵肌

津田真帆展
(2010年5月2日〜10日 新潟絵屋)


大倉宏(美術評論家)
津田真帆「行きたい道」 「行きたい道」2010年
 水彩、紙 25.0×27.0cm


 「巨男/おおおとこの話」や「あかちゃんがいるの!」(大日本図書)、「あきですよ」(金の星社)などの絵本の仕事もある画家津田真帆の絵の特徴は、独特の生命感だろう。
 その独特は、大樹の野太さというより、細い野の草の強さ、「力強い」より「生き生きしている」という言葉で表したくなる質のものだ。
 すぐれた表現の多くには、違うもの、時に対極的な要素が同時に見られる。津田の絵(水彩画)にも、強い生命感とともに、小さな存在へのいつくしみ、繊細な目と心の動きがあり、スピーディーでいさぎよい線とともに、ゆったりした、楽しい時間の気配が感じられる。
 新潟では3度目の個展となる今回の発表では、その異なるもののまざり具合、バランスがより精妙になり、絵の世界のスケールがぐっと広がってきた。なにより色彩が深まりを見せてきた。鮮やかな色より、少し濁った感じのする色調に幅が生まれ、味にたとえるなら苦みや渋みが、不思議な滋味に感じられるようになってきた。
 一見ファンタジックに見える彼女の絵は、けれどどこか現実の体験の直截性を響かせている。現実に誘い出された、深い夢想の手ざわりがある。水彩という画材のもつ即興性、やわらかな強さ、夢への親近性は、彼女のようなアーティストの資質に誠にぴったりだ。
 質感も素晴らしい。展覧会を見る人は、絵に顔を近づけてほしい。その絵肌の不思議な美しさにはっとすることだろう。

新潟絵屋・津田真帆展1

新潟絵屋・津田真帆展2

新潟絵屋・津田真帆展3