News Paper
2011年2月21日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

生活空間と精霊たちが融合

星野健司 ―彫刻展―
(2011年1月30日〜3月6日 エムスタジオ)


佐藤晴夫(新潟市北地区公民館長)
星野健司「神聖舞踏XIV ダフネ」ステンレス
「神聖舞踏XIV ダフネ」ステンレス


 彫刻家・星野健司が新旧の作品から、日常生活の延長線で作品が楽しめ、肩の凝らない個展を開催している。なにげない生活空間が作品を選び、選ばれた作品は、日常性の中へと連結されていく。それが美術館とは違った鑑賞者の柔らかな眼差しを誘い出していた。
 民家を活用した展示場。その庭には、キュービックな蛇がいて、暖房の効いた室内には、鉄やステンレスの破片でできた小さな精霊たちがいた。それらは、さりげない日常の中に、さりげなく存在していた。
 生活空間に精霊たちがいること。高層ビル群に伝説が生き、田園を貫くハイウエーに広がる点と地に八百万の神々が鎮座していること。これが表現者・星野が見ている風景だ。科学万能主義にかき消されていく豊かな精神世界。土俗信仰と物質文明。この相対立する世界を包摂するかのように、これまで、星野は鉄を素材に次々と作品を生み出してきた。
星野健司「獣頭の女」 今回、23点の彫刻と9点のドローイングが展示されていたが、15点の新作は、手のひらサイズのオブジェ風の作品だった。見ていて楽しい。これを星野は「傍らの精霊たち」と呼んでいた。羽虫やカタツムリを連想させ、言葉をかけたくなるほど生命感に満ちていた。その精霊たちを近作の頭像『獣頭の女』が醜悪な形相で吼える。面は裂けるように割れ、口元が歪む。獣頭の女は、紛れもなく伝説上の獣神だ。なぜこれほどまで悲しくに歪むのだろうか。

「獣頭の女」