■ あーとぴっくす
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「生きる」本能の胎動を描写
中島佳秀展
(2011年3月22日〜30日 新潟絵屋)
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大倉宏(美術評論家)
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「夜」2011年
ミクストメディア/麻布 |
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中島佳秀の絵の動物は、なんだろう、すごく生きている。
それは中島が生きている動物を、見て、描いているからではなく、その逆で、おそらく何も見ず、白紙に描き始めるその衝動的な始まりが、描き手の中の小暗い闇―生命の源泉から「動物」を、追い立て、駆け出させ、放つからだろう。
今回の出品作のオオカミ(たぶんオオカミだろう)の毛に、目が引き込まれる。それは厳しく、暴力的な自然の中で、打たれ、苛まれながらも命にかじりつき、絶壁を自力ではい上がってきたまぎれもない野生の「生きもの」の毛だ。体表に鋭い鑿で彫り込まれたような、コワい毛の触感に、生きものの「生きる」本能の胎動を、なまなましさを感じる。
グラフィックデザイナーであり、サウンドアーティストであった中島が、3年前にいきなり始めた「絵」。
鉄さびを砕いて作られた絵の具で描かれる、疾駆し、舞い上がり、咆哮し、佇むモノクロームの動物たちにしょっぱなから引かれてきたけれど、その「いきなり」感が、いまも薄まることなく、小鳥を乗せた大葉を包む熱帯の大気や、群れからはぐれて自分に沈潜する馬(馬だろう)の体皮を濡らす朝靄のひだにまでしみこんできたのを見て、うれしくなる。
私の内なるジャングルに、サバンナに豪雨が襲い、風が立つ。
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