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2011年3月31日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

明解な色彩で創る平面空間

外山文彦「CANVASシリーズ 1990―2010」展
(2011年4月2日〜10日 “文学と美術のライブラリー”游文舎(柏崎市))


舟見倹二(美術家)
外山文彦「Asa 2010-04」 「Asa 2010-04」


 いま外山作品に対峙した時、その絵画に見えるものは「どこまでも自立する抽象表現の追求を平面に試みている」と言ってもよいのではないだろうか。そこには確かな色面の、限られた構成のなかで生成された平面空間が存在する。
 その作品はキャンバスの裏地を表にし、描かれるべき白いキャンバス面に抗して「裏返す」という逆な手法を選ぶ。単なる感覚的選択とは異なり、表裏のありようを日常への接点とした思考が作為として推察できよう。
 麻面の素の色面をベースにするこの構成の原点は、作家がまだ大学在学中の二十数年前のことであるが、確かな方向が現れたのは、現代の絵画が公募で大々的に競われた1994年の第1回「感動創造美術展」(主催・福田組)での受賞作品にあろう。以降、外山の絵画の基調となり、現在に続いている。今展は、この20年の制作から作家が自選した作品で展示構成される。
 作品は簡素で、アクリル絵の具で部分的に着彩された明解な色面の構成がフラットな空間を創りながら、キャンバス地特有の肌合いと微かな色調の差が調和を引き出す。また、分割された枠面のつくる接合部の、境界を形成するラインも見逃せない。区分するように塗られた色面に生じるラインとは別に、細い谷間に影を落としての分割線となる。
 垂直または水平、あるいは斜行するその境界に視線がむかい、行きかう静かな響きともとれる世界を感応する。それらはこの抽象の形態から感じとるイメージとなり、見るものとの間に言葉を創り出すに違いない。

外山文彦「CANVASシリーズ 1990―2010」展