News Paper
2011年9月24日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

日常生活のリズムを視覚化

小林久子 展
(2011年9月22日〜30日 新潟絵屋)


井上美雪(新潟絵屋運営委員)
小林久子「Positive Choice」 「Positive Choice」


 雨の夜道。信号で止まるとワイパーを止め、フロントガラスに散らばる無数の光の粒を眺めた。打たれては消え続ける雨粒に、小林久子さんの絵を思い出していた。
 絵が具体的に思い出されるというよりも、絵から受けたイメージは浮かぶ。久子さんの絵は、そんなふうに私の日常の近くにある。それほど、強く惹かれる絵だった。
 一枚の絵の奥に、何層もの色の透けた布が続いている。行けば行くほど奥があることに気付く。奥はかすんでいるが、その様がまた美しい。絵を見つめながら、いくつもの層の間で恍惚として佇んでいられる。
 小林さんの日常はニューヨークの街角にある。そこで20年以上の時を過ごす久子さんが、国内外で精力的に発表を続けるほど、イメージは泉のように湧き出てくる。泉の源は、画家の純粋な探究心ではないだろうか。
 「自分の心の奥底にあるリズムを捜し求め、それをビジュアライズして実体として表現する、それが私にとって絵を描くということです」
 2年ほど前の、小林久子さんの言葉である。作者の内なるリズムを視覚化した絵は、見る人の心に新しいリズムを呼び覚まし、日常生活の時々に、新しい思い思いの絵を感じさせてくれる。