News Paper
2012年10月11日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

三井一樹 door展
(2012年10月12日〜20日 新潟絵屋)

←「カサブタ」2012年 33.0×20.0×7.0cm


 
扉の向こうに少年の夢見て 坂爪勝幸(陶芸家)

 まだ少年の面影を残していた三井君が私の工房に入ったのは、彼が、高校を卒業して間もない頃だった。あれから随分の時間が過ぎて、大人の雰囲気をまとって作陶と子供を育むための仕事の両方をこなしている。
 男は、幾つになっても夢見がちなもので彼もその例外でない様に見える。いつまでも少年の頃に見た鮮やかな夢をセピア色の消え入る様な画像にしないために彼は、作品を作り続けている。DOORという彼のタイトルは、まだ見ぬ夢の世界をまさぐって土をこねて火をかいくぐらせた彼のモノローグ(独り言)に見える。
 かつて火を扱う者たちが、鬼の仕事と言われていた遠い昔から、いつも土と火に裏切られた鬼たちは、大粒の涙を落としていたものだ。三井君が、土をこね、破り、貼り付け、ヘラで伸ばし、削り、叩き、エッジを立ててDOORを開けてまだ見えぬ世界に夢を見て昔、泣いた鬼たちの様に土くれを焼きながら涙する彼の季節かもしれないと思っている。