News Paper
2013年11月12日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

小磯稔 うるし絵小品展
(2013年11月12日〜20日、新潟絵屋)

「古代彷彿・群鹿U」2013年 漆絵 33.3×12.1cm

 
彩漆の鮮やかな発色に注目 森行人(新潟市歴史博物館)

 小磯さんは1960年東京芸術大学美術学部工芸科(漆工科)を卒業した。その後、新潟大学教育学部に赴任し、退職後は漆芸家として作家活動を行う傍ら、江戸時代から続く、新潟の漆器業の技術究明と継承に尽力されている。
 作品は菖蒲やバラなど身近な花々などをモチーフにして、黒漆塗りの板に平蒔絵を描き、彩漆で彩色する手法で作られている。約30点の作品の中でも「古代彷彿・群鹿U」=写真=は古代の文様に着想を得て、鹿の群れを色鮮やかに描いて躍動感がある。彩漆の鮮やかな発色は、長年の研究に基づく、温湿度と乾燥時間の微妙な加減により生み出された。
 目を奪うのは黒漆の塗り。鏡のように平滑でありながら光沢はやわらかで、視線が吸い込まれるような奥行きを感じる。黒漆を丹念に塗り重ねた板の制作は、1年もの月日をかけたという。職人の技を取り入れた黒漆塗りには、漆という素材の魅力が凝縮されている。