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2005年11月25日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

夢失わぬ人へのエール響く

本間ケイ展―めぐり逢った女たち―インド・パキスタン取材の旅より―
(2005年 〜12月3日 にいがた銀花)


里村洋子(「農民文学」会員・エッセイスト)
「マンダワの踊り子」

 たおやかにひたむきに生きるサリーの国の女たち。
 本間ケイさんがこの国々を初めて訪れたのは16年前、旅人としてであった。最初に目に入ってきたのが女たちの美しさだった。カースト制度と女性蔑視という二重差別のなお残る中で、かの人たちはしなやかに暮らしていた。その強さと明るさに感嘆し、とらわれた。以来通い続けること24回、巡り逢った女たちの折々の記憶を画紙に印してきた。
 作品には、古来から伝わる民話や寺院のレリーフ、古い屋敷に残る壁画などのモチーフを背景に女たちを幻想的に描いた油絵が多い。
 今回はそんな油絵のほかに、細部を描いたペンシルワーク(一部着彩)も多く並ぶ。写実画のようだが、村や街で出会った女たちをいったんカメラに収め、日時を経てからイメージした、やはり本間さんの記憶の集積だ。
 本間さんは実は画業のほかに現地女性たちの生活自立を支援するNGO活動にもかかわっている。「次はいつ来るの」。彼女たちは心待ちにし、取材旅行の手助けをしたり、モデルになったりしてくれる。多くは下層社会に生きる女たちだ。
 今回の地震では幸いにもその人たちに大きな被害はなかったが、個展の売り上げの一部をささやかながら被災地に届けたいと願っている。耳をすますと、やわらかいサリーに包まれた美しい女たちの絵からは、逆境にあっても夢や希望を失わない世界の人たちへのエールが低音で響いてくる。