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2006年5月20日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

素朴なぬくもりが人柄映す

渡部昭彦「暮らしの器」展
(2006年5月22日〜30日 新潟絵屋)


上野啓三(会社役員)
焼き締めビールカップ

 「多くのお店を回ってよく吟味してから買ってください」―益子焼陶器市の来客に、渡部昭彦さんは丁寧に説明する。静かな林間の陶窯で生まれる作品は、謙虚で誠実なその人柄を映して素朴な土のぬくもりが感じられる。
 食器類から装飾品まで多彩な品ぞろえの中で推奨したいのはオリジナルな「薄物の器」だ。肉厚な感触の益子焼の中で、実用と趣味性を兼ねた独自の作風を築いている。渡部さんのすぐれた感性と、ロクロの特技が生み出したものだろう。
 上戸の私はことに酒器を愛用している。薄手のビールカップを冷やしてから飲むと、きめ細かな泡立ちをしてのど越しは最高。焼き締め、灰釉など趣の異なる品を日替わりで選ぶのも楽しい。炭窯変のカップはとっておきの逸品である。徳利とぐい呑みも粒ぞろい。白釉、織部など色とりどりのぐい呑みで陶酔境に誘われる。
 薄く軽くかつ重厚な味わいを感じさせる手作りの器の美しさ。使い込むと表情が微妙に変化して器が育っていくというのもうれしい。食卓の料理が引き立ち、佳味が倍加すること請け合いだ。
 渡部さんは大学のサークルで陶芸と出合い、常滑、益子で修業して1992年に独立、益子の隣の市貝町に築窯した。熟達の中堅作家が精魂込めた作品群をぜひご覧いただきたい。