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2009年4月21日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

自己表現追求、ぶれない姿勢

信田敏郎VS関根哲男
(2009年4月21日〜26日 新潟市美術館 市民ギャラリー)


外山文彦(美術作家)

 
 本展は信田敏郎と関根哲男という県内アート界で極めて精力的な制作活動をおこなっている2人の展示であるが、届いた案内には「二人展」どころか、そもそも「展」という言葉さえなく、VS(バーサス)とだけ記されている。信田「アンド」関根ではなく対決を表す「バーサス」であることは、単にみせあうだけの展示とは一線を画し、作品での真剣勝負を挑むという意図であろう。背中あわせの一部屋ずつをそれぞれ使っての展観である。
 2人とも、ここ数年シリーズとして継続している仕事で臨む。関根は画面に布片を幾重にも貼り重ね、バーナーで焼くという手法の「原生」シリーズ。執拗に繰り返す行為の集積は、高い密度をもちながら重厚な画面を形成し、昨年からは仏頭や位牌を布片に封じ込めての新展開が加わった。一方、油彩作品の信田は、暖かい色彩と柔らかいグリッドの構成が印象的な「光の場所」と題したシリーズの新作。使う素材や色彩など見事に対照的であるが、互いに大作であり、相通ずるものは制作へかける圧倒的なエネルギーと、その背後にある自己の表現を追求し続けるぶれない姿勢である。
 展名のバーサスからは、この2人の強力な個性がせめぎあう、「場」としての魅力を想起させる。真剣勝負のせめぎあいのなかで、2人の世界がより浮き彫りになってみえることだろう。個々の作品の表層だけではなく、根底にある作家の情念なども感じ取りながら味わってほしいと思う。