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2000年1月25日 新潟日報 掲載

美術時評
 


小川弘幸(文化現場主宰)

 「等々力弘康展/HANAYUI」(1999年12月3〜25日、新潟市・ギャラリー沙衣)。あるときは現代美術のコレクター、またあるときはアーティストとしても異彩を放つ等々力弘康の個展。氏がこれまで絵画とどう対峙してきたかを物語るかのような新作が並ぶ。まるで56年間に及ぶ氏の人生の今日的断片を垣間見るかのようでもある。
 いずれの作品からも真摯な響きが伝わってくる。色彩は豊富でリズムやタッチも一様ではない。軽やかそうで重たくもあり、華やかなれど暗さも併せ持つといった感じ。あるいは喧騒と静寂、洗練と野趣等々、一見相反するする有様がそこに同居している、というか、それらの末尾はメビウスの帯のごとくつながっていて、表裏に二分できるものではない。そんな印象を抱きつつ飽かず見続けた。同展は今年、ニューヨークとパリの吉井画廊でも開催されるとのこと。
 年が明けたら、いずこもミレニアムということで、「祝 2000年・現代美術の小さな祭典」と名付けられた企画展が待ち受けていた(2000年1月5日〜2月5日、長岡市・カフェ&ギャラリーZen)。県内在住作家を中心とする18人に及ぶグループ展。同展事務局には堀川紀夫。参加作家の大半を知る筆者としては、お年始気分も手伝っていそいそと会場に出掛けてみた。
 そこに展観されていたのは一人3点以内を出品条件とする小品のオンパレード。およそ40点。作家それぞれの大作の迫力を知る身にとっては、いささか欲求不満な気分も残らないわけではなかったが、それはそれ、ここはここ、というわけで、小品ならではの小粋な魅力にひととき酔いしれる。
 同じ条件下で、これほど多数の作家の作品を一堂に目にすると、より作風の違いというものが際だって見えてきて面白かった。さらに、どの作品にもタイトルとともに売値が添え書きしてあるのだが、そのいずれもが求めやすい(平均すると2,3万円前後か)価格設定であったことにも注目したい。「現代美術はわからない」から、「自身で買って部屋に飾るなら」の視点に移行させるきっかけとしても好企画。

飯室哲也
稲憲一郎
小川宏
大嶋彰
数見利夫
佐藤昭久
佐藤賢司
佐藤秀治
関根哲男
霜鳥健二
外山文彦
ヒラタヒロヒコ
舟見倹二
星野健司
堀川紀夫
本多酒泉
前山忠
三上祥司