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2002年5月18日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

素材が持つ奥深さ、美しさ
BSN愛の募金・第4回新潟県工芸家作品展
(〜5月21日 新潟伊勢丹7階アートホール)

伊藤純一(新潟絵屋企画運営委員、建築家)

 

 BSN愛の募金新潟県工芸家作品展も、今回で4回目。会場には陶芸・金工・染織・漆芸・木竹芸・硝子七宝など、新潟の工芸家131人の作品が展示されている。
 「日常生活に工芸作品を」という意図もあり生活のなかで使ってみたい、飾って楽しみたいと思わせるような作品もたくさん展示されている。一点一点を見て、その作品の置かれている空間や使っている環境を想像するのもまた楽しい。
 漆芸作品「滄」も背後に広がる豊かな空間を感じずにはいられない。静寂、緊張といった凛とした空気の中にぬくもりや安らぎを兼ね備える空間(これは和風のエッセンスといえるかもしれない)。漆黒と紺色のコントラストで仕上げられたこの造形物は、そんな空間を想像させる。
 漆の美しさをもっとも引き出すであろう面が、柔らかなラインで構成されている。そこに緊張のラインが一筋加わる。それは奥深さとぬくもりを持つ漆の素材感を引き立て、絶妙なるコンビネーションを作りだしている。前述した空間にこの作品が出しゃばらず、しかし存在感を持って在る姿が、目を閉じると見えてくるようだ。その他「紫陽花漆鉢」や「本堆輪香合」など漆芸作品だけでも多種出展されている。
 陶芸作品、竹芸作品や金工作品は使ってみたい気持ちになる物が多い。染織作品は壁面に飾るとその場が華やかさとぬくもりに包まれるにちがいない。素材の持つ奥深さや美しさを、さまざまな作品から感じることができる展覧会である。