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2002年6月8日 新潟日報 掲載


 

こころおもむくままのすがた
粘土作品を展観
(2002年6月22日〜30日 新潟絵屋)

遠藤六朗(びわこ学園支援センター所長・新潟市出身)

作者:若杉勝

 日本一の湖、琵琶湖を持つ滋賀県。その滋賀県にある第二びわこ学園が地元の方々の協力で、粘土作品展「にゃにゅにょ 土がわらう 新潟絵屋展」を近く新潟市で開くことになりました。
 今回の企画は長岡市在住のドキュメンタリー映画監督・小林茂さんの橋渡しによるものでもあります。小林さんは「阿賀に生きる」や札幌の学童保育翼クラブの記録映画三部作などで知られていますが、第二びわこ学園とも縁のある方です。18年前、私ども施設の琵琶湖周歩に同行し、写真集「ぱんぱかぱん」を出版されました。
 今回、施設の老朽化に伴う移転整備を契機に、第二びわこ学園で生きてきた、障害の重い人たちのいのち、生きざまと向き合う、ドキュメンタリー映画「わたしの季節」(仮題)を撮影することになっています。
 現在、社会福祉法人びわこ学園は第一びわこ学園(昭和38年開設 入所数98床)と第二びわこ学園(同41年 同125床)の2つの重症心身障害児・者療育施設を運営しています。滋賀の障害児・者施設では、粘土活動に活発に取り組み、第二びわこ学園でも粘土室を作り20年以上にわたって取り組んできました。
 粘土は、言葉のない障害の重い人たちにとても優しい素材です。手や指が動くままにかたちを変え、こころがおもむくままにすがたを現してくれます。言葉が過剰に過ぎる時代、かたち、すがたに現れたいのちと向き合っていただき、新しいコミュニケーション(響きあい)を作るきっかけとなれば幸いです。
 ところで、新潟とびわこ学園は深い縁があるのをご存じでしょうか。びわこ学園の創設者は糸賀一雄先生です。知的障害児施設近江学園を造り、戦後の障害児・者福祉をリードされました。その中で新潟県の「手をつなぐ親の会」の方々とも親交を重ね、昭和41年、当時の塚田十一郎新潟県知事とびわこ学園の間で契約が取り交わされ、新潟県の子どもをびわこ学園が預かることになったのです。
 びわこ学園は、昭和41年から46年まで27人の子どもたちを受けとめました。その後、障害児・者福祉の充実などで昭和54年10月以降、新潟への帰還が始まり、最後に帰った方は平成6年9月でした。
 家族をはじめ関係者がどのような思いで送り出したか、どのような思いで新潟に帰ったか、それは筆舌に尽くしがたいものがあったかと思います。私どもには、ただ、思春期をびわこ学園で過ごした子どもたちのすがたが鮮烈に残っています。
 今回の展観には、新潟から迎えた子どもたちと同世代の作品もあります。新潟に帰った子どもも、今は4、50代。粘土作品のなかに、刻んできたいのちの年輪、重さを感じ取っていただけたらと思います。

2002年6月22日(土)
スライド・トーク「にゃにゅにょの世界」
田中敬三(第二びわこ学園粘土室担当)
大倉 宏(美術評論家・新潟絵屋代表)
小林 茂(ドキュメンタリー映画監督)
会場:新潟市美術館講堂