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2002年11月23日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

生活空間で楽しめる贅沢さ
県工芸会小品展「たくみの小宇宙」
(2002年   〜11月26日 画廊イタリア軒)

田代早苗(新潟絵屋)

 ルーブル美術館の「モナリザ」があまりにも小さいのに驚いた、という話をしばしば耳にする。モナリザに限らず古今東西の著名な美術作品の現物が作品としての力はともかく「物体」としての大きさが写真などの印刷物を通してみるよりも小さい場合が多い。優れた作品は大きくみせる力があるのだ。
 にもかかわらず展覧会、それも公共のスペースを使った作品展に出品される絵画、書などは広い会場に負けぬようひたすら大きく、巨大に製作される。確かに大画面を埋めるエネルギーと広い平面を緊張感を持って作品として成り立たせるのは作家としての力の試される重要なポイントだ。しかしあのような巨大な作品を掛けられる壁面が現代日本の現実的な住空間に果たしてあるだろうか。美術作品が生活と切り離され、どんどん観念的な世界に流れてゆくのは美術にとっても日常にとっても幸せなこととは思えない。
 今回、ミニチュールによる「小品展」と銘打ってはいるが作品としては決して小さくない。立体は基本的に15立方センチ以内というサイズだが内容はどれも大きい。金工、陶、漆、染、織、刺繍、木工、七宝とさまざまな工芸の分野における第一人者たちがそれぞれの個性を出してつくり上げた作品は見ているだけで楽しい。どれも身の回りに置いて楽しめる作品ばかりだ。第一級の匠の技を生活空間に置くとは何と贅沢なことか。