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2003年1月18日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

個性的な作品ぞろいの企画
冬、「白磁」展―凛冽たる白
(2003年 1月11日〜1月19日 ギャラリー炎舎)

田代早苗(俳人)
金憲鎬

 いにしえの温暖な土地に住む人々が「雪月花」という言葉を生み出した。彼らにとって、雪は月の如く密やかで、花の如くはかなく美しいものであったのだろう。
 だが北国に住む人間にとって雪は楽しいばかりのものではない。時として吹雪となり、豪雪となり、生活や生命を脅かす事すらある存在だが、南の人とは比べものにならないぐらい北国の人間は雪のその美しさも荒々しさもさまざまな相貌を知っている。
 「白磁」といえば透きとおるように美しい肌の表現に使われる通り、冷ややかで滑らかな焼き物の姿を思い浮かべるだろう。しかしここに並べられた作品は、雪にさまざまな表情があるように白磁の表現が決して冷たく美しいばかりのものでないことを教えてくれる。
 金憲鎬(キム ホノ)の作品=写真=はまるで地中から生え出した未知の生命体が、そのまま石化したような個性的な形態をしている。それでいて奇を衒っている印象は不思議となく、みる者の目に美しい。
 それに対して梶なな子の作品は、いかにも白磁らしい姿をしている。シンプルでシャープなフォルムを、澄んでいながら穏やかな色が支え、ぎりぎりまで単純化された形でありながら、手に持てば柔らかく指に馴染む。
 隠崎隆一、中島勝乃利、真木弘姫、森岡由利子らの作品もみな素晴らしい。吹雪の激しさこそよく似合う企画展ではないだろうか。