n e w s p a p e r
2003年2月5日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

動物たちが織りなす協奏曲
猫と家畜展
(2003年2月6日〜11日 羊画廊)

里村洋子(「農民文学」会員)

参加作家:

浅見陽子
尾崎 笑
菅野由貴子
小菅梨絵
近藤美紀子
さいとうようこ
佐野昌子
本望マサ子
皆川良一
渡辺則子
渡邊利馗

菅野由貴子「long trip」
スクリーンプリント 12.5×14.8p
ed.15 2001年

 近くで自然養鶏をしている友人から毎週卵1パックとミニ通信が届く。
 「メス100羽の中にオス5、6羽いますが、みんな紳士で、おいしいものがあるとまずメスに食べさせます。見知らぬ人や犬猫が来ると先頭に立って警戒にあたるし、寝るのは止まり木の上ですが、いつまでも来ないのがいると、そろそろ寝るぞと迎えに行くんです」「鶏たちにも記念日があります。はじめてわが家の家族になった日。生後30日目に広い土間に解放される日。はじめて卵を産む日など。この記念日を一緒に喜びあえるってのはうれしいものです」
 読みながらオムレツを焼いていると、卵がまだ鶏で、コココと楽しそうに井戸端会議をしている姿などがフライパンの中に見え隠れし、こちらも幸せな気分になってくる。
 家畜はみんなそうかもしれない。ハムがまだ豚で、日なたの匂いのするワラに包まれ昼寝をした後に、霜降り肉がまだ牛で青草萌える牧場をかけ回った後に、マトンがまだ羊で大勢群れながら山の端にかかる虹を見つめた後に、ある日、みごとに変身して食卓に登場し、私たちをうっとりさせてくれる。
 猫だって変身する。忙しい時は手を貸してくれるし、焙られるような日には猫唄を口ずさみ、なぐさめてくれる。
 猫と家畜たちが織りなす協奏曲。どちらも人間の幸せに必要な余白なのである。ぜひ。