n e w s p a p e r
2003年2月18日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

雪国で野外アート展の試み
写真展・211日間の記録
(2003年2月11日〜22日 長岡市・カフェ&ギャラリーZen)

佐藤秀治(美術家)

参加作家:小川宏・佐藤秀治・佐藤ムツ子・霜鳥健二・関根哲男・外山文彦・中嶋均・堀川紀夫・前山忠

 本展は栃尾市軽井沢で、昨年9月から今春まで開かれている、延べ211日間の野外アート展「Nのための食卓・展」を、移り変わる季節とともに記録したものである。「N」は、自然のことである。通常では、案内状でより多くの人に足を運んでいただくのであるが、今回は、「自然」相手に秀峰守門岳に作品を並べたという一風変わった野外展なのである。以後、人々に知れることなく2メートル余りの9本の杭上に、一見お供え物のように9つのアートが置かれた。
 そもそも「展」そのものが一つのアートなのである。山里の借用地を器と見立て、花を生けるように個性的な9本の杭が立つ。自然と時の流れを共有する交流なのである。季節は巡り、作品に赤とんぼが止まる。稲刈りが始まり、柿が熟れて落ちる。やがて一面に白い雪が積もる。作品は季節を借景として時の流れまでも取り込み、村を往来する人々を魅了した。
 今日もなお、自然と人為の関係を浮き彫りにし、それぞれ異なる魅力を発している。高々と掲げられた作品は、予想通りに雪に埋もれた。雪の下となり、その姿すら見えなくなった。またわずかな膨らみだけで存在を伝えもしている。
 本展は、雪国ならではの野外アート展の在り様と不確かな意義をいま一度確かめ合うための試みでもある。展示された250枚余りの写真たちは、今回の新しい試みを雄弁に語り伝えている。