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2003年3月5日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

おいしい構成のグループ展
花・華・はな 3人展
(2003年3月1日〜3月11日 楓画廊)

大倉宏(美術評論家)

今田幸
「西を向いて」メゾチント
20.0×20.0B 2002年

馬場恵
「SHAPE“Snapdragon”」
アクリル絵具、水性クレヨン、
シルクスクリーン、綿布
60.5×45.5B 2003年

中村一征
「はな(tulip)」
膠彩、墨、麻紙
19.0×27.3B 2003年

 レンタルの画廊(画廊という名の貸し会場)が大半だった時分にはグループ展といえば作家同士の結びつきで開かれるものばかりだった。
 企画画廊の増えてきた新潟市では、このところ画廊企画でのグループ展が相次いでいる。
 「花・華・はな3人展」は、花をモチーフにした企画展。同じ会場に並ぶことで、それぞれの世界の声の重なりとずれが、火花や揺れをも生んでスリリングだ。
 1階に飾られた馬場恵の絵と版画(シルクスクリーン)は、不安定なものを明るい器に盛ったような画面。美しいけれど、見ていると目の裏側がどこか、ひねられるような心地がして印象的。
 2階には今田幸の銅版画(メゾチント)と日本画顔料で描いた中村一征の絵。静かで、ほのかに華やいだ空気が流れている。
 今田のモノクロームの花は、生き物としての瑞々しさを濾しとって、花のもろい物質感と幽気が溶けあう気配。中村の絵は抽象のようで、桃山時代の障壁画や辻が花の断片みたいな空気を薫らせる。ふくよかな絵の具の質感が、目のなかの味蕾(みらい)をくすぐるよう。
 高低の変化をつけた展示も、それぞれの絵の表情に照応していて楽しい。
 花のイメージが持つ複雑な内容が、違う匙ですくいとられ、いい料理人にもりあわされた会場が心地よい。繊細に構成されたグループ展は、見る側へのもてなしの心を感じさせる。