n e w s p a p e r
2003年4月8日 新潟日報 掲載

美術時評
 

長岡の画廊喫茶 惜しまれつつ幕
「カフェ&ギャラリーZen」

佐藤秀治(美術家)

 長かった冬の終わりに、突然の終焉を告げる便りが届いた。四年間、長岡で約百回の創作発表を精力的に支援し続けてきた画廊喫茶「カフェ&ギャラリーZen」が、所期の目的を果たし、三月末で幕を降ろした。
 喫茶兼画廊としての「ゼン」の功績は、長岡の街にフレンドリーで、活力に満ちた魅力的なアートシーンを形成したことにある。その恩恵に授かったのは、プロやアマの作り手から、主婦や大学生・高校生までと幅広く、この異年齢の輪が特筆される成果である。開業意図は人と人の織り成す「文化創成」にあった。コーヒーを味わいながら語らい、メーンはむろんアートにあり、貸画廊を看板に画廊企画を織り込み、さまざまなアートを身近に取り入れることを提唱してきた。高いレベルのプロ作品やプライベートな作品、恒例となった障害者によるアートなど、表現の垣根を取り払い公開した。さらに、週末にはミニコンサートや作家との交流パーティーを企画し、人と人の出会いを設定し、アートとの融合を図った。
 長い間、本県の文化風土は、中央に追随する姿勢に甘んじ、改善されることもなく今日までいたっている。その映し鏡のように中越も、閉塞状況下にあった。このような背景の中、「ゼン」の存在は一陣のさわやかな風のようなものだった。人々の記憶に希望という名の夢を抱かせた。その意味を一人ひとりがしっかりと受け止めることが、深謝を表明することであろう。