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2003年5月12日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

力強いストロークの美しさ
佐藤正二展
(4月25日〜5月19日 長岡市小沢町・リヴィエール・ヴィヴァン)

佐藤秀治(美術家)

 会場は地図で十分確かめることをすすめたい。建物の中央に展望室をもつ洋菓子屋の二階で、長岡の新しいアートスポットである。
 シックな黒い色面の正方形の作品は、品格をもち真新しい壁面にマッチし、今日的ニーズに応えている。私は「右上から、一気に振り下ろされる力強いストローク」と、作品を紹介していたが、実は逆に右方向に伸び上がるストロークなのかもしれない。まさにそうした作品が30点近く並んでいる。
 このシリーズに最初に出合った時は、モノクロ面が突出し、どこかなじめなかった。しかし、今回のようにまとめて拝見すると、全く誤認であったと気付かされた。
 今回の展示を二分すると、シルクスクリーンとアクリルを用いたドローイングである。水平ではなく右上がりというのは、作家が右利きだからで、力強く一気に振り下ろすことは、そのまま暴力的な意味合い、鉄拳や怒りや破壊であるが、作家はすんなりと銀一色を選ぶことで解消し、さらに西洋の刷毛ではなく、東洋の筆感を感じさせる、柔らかな、力の加減が微妙に漂う筆跡に仕上げている。
 ここに創作に対する作家の思いが凝縮している。インクのにじみの美しさや投石による波紋の揺れにも似ているが微妙に異なり、油性の皮膜がつくる一瞬の美の生成に携わっている。
 作品タイトルも小見出しのように洒落ている。観客の好奇心をくすぐり、壮大な人間ドラマに誘い大いに楽しませている。