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2003年6月24日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

繊細さ感じる大胆な筆遣い
香る風 橘三紀展
(6月22日〜6月30日 新潟絵屋)

越野 泉(新潟絵屋企画委員)

「ソファー」
2002年

 2年前、新潟下町の喫茶店「ノア」で橘さんの絵を見た。少しくすんだ赤や青で、女の人を描いた絵がいくつかと、そのほか数点が飾られていた。その顔を見ていると、なんだか不思議な気持ちになった。そうきれいな顔立ちという訳ではない。でも魅力的。どこに惹かれるのだろう。こちらを見つめる瞳、ふうっと息をつきそうな唇。写実的ではないのに、なんだか生きている人のよう。好みの分かれる顔だ。
 昨年の、にいがた銀花ギャラリーでの個展の時、作者と会って話をした。両津市出身で、光風会に長く所属していたが、4年前に退会したとのこと。優しい人だが、絵に関しては怖いほど真摯だった。絵のモデルは特にいないという。
 展覧会をお願いすることになり、その後、アトリエに何度か伺った。床に絵の具の染み込んだ古いアトリエ。FMの音楽が流れている。絵を習いにきている人たちの、明るく華やいだ笑い声が印象的だった。
 新作の中の女の人たちは、前にも増して艶やかで、チャーミング。大胆な筆遣いなのだが繊細さを感じる。絵の中に爽やかな風が通っているようだ。モデルはいないとはいっても、生徒さんたちとの楽しそうな交流などから、生き生きとした表情が引き出されているのだろうか。共通する表情には、作者の心のうち深く住む、永遠の女性が映っているようでもある。一途に描いてきた人の自信と不安が垣間見える。