n e w s p a p e r
2003年12月10日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

「西洋」「東洋」組み合わせに妙

山下幸治展
(〜2003年12月14日 長岡市・ギャラリーdotONE)


外山文彦(アートコーディネーター)


 若い女性像をリアルに描いた具象絵画が多くみられる山下幸治は、時折見せる抽象作品や現代的な表現などにも別の魅力を持ち、今秋の「弥彦野外アート展」では野山一帯を使ったインスタレーション作品を発表した。かっては作家内部での多様な側面を、個々の作品ごとに明確に使い分けていたようだが、近年は微妙に融合させつつもあるようだ。
 「装飾の風景」と名付けられた今回の個展では絵画16点を並べる。モチーフの女性や花は具象的に描かれる一方、その背景は金箔を多用したうえに、それに線刻を施し装飾的な模様を付け加えるなど抽象的色彩が濃いものとなり、両者の連携を試みる。
 人物描写は元来クールな画風であるが、テンペラ技法により細かく描かれた表情には柔らかさが加わる。100号の大作「想いを馳せる」は、背景とのバランスも冴え、西洋の古典技法と東洋的手法の組み合わせの妙もあり味わい深い。展全体を通し「和」のテイストが強く醸し出され印象的である。
 個の作品をつぶさに見ると実験的な色合いのまま熟れてない点もあることは否めないが、これらの一連の試みには興味を
そそられる面がある。作家の中で、今後どう消化され作品が展開されていくのか、楽しみにさせる作品展である。
 1971年生まれ、長岡市在住。