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2004年1月20日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

「夢」としての日常生活追求
倉茂義隆 展・日曜日のテーブル
(2004年1月13日〜25日 長岡市・ギャラリーdotONE)

小川 宏(造形家)

 昨年の個展で、作家は次のように語っていた。
 17年前、J・L・ボルヘス「夢の本」の広告で、「人生とは眠りであり、愛とはその夢である」という言葉に触れ、瞬間自分の存在がひとつの夢であるとさとった。その時から双肩にのしかかる重荷は振り払われ、自由という感覚がわが身に蘇るのを感じた。その後の私は写真での可能性を信じ、撮りためることができた。
倉茂は人間の存在を眠りの中にあるものとし、自身の生きる世界を夢と考え、「夢ならばもっと自由に」との思いから今展のテーマを見いだしたという。
 テーマは、どこにでもあるテーブルと一般家庭の室内である。
 目の前に広がる世界、それは見えている夢にすぎないという。その普遍的真実が認知されつつある現在、倉茂は17年前にそのことを信じ、創作に没頭してきた。このような普遍的世界は、「ゆめのよで、かつまどろみて ゆめをまた かたるもゆめの それがまにまに」と歌った良寛の精神的世界を思わせる。
 倉茂の、自身が「夢」であるという時、それは自身が「夢」をみているだけでなく、「夢が私を視ている」と語る。この奇妙ともいえる関係はどのような精神的遍歴を経て辿り着いたものであろうか。
 展示作品は、光と影のグラデーションで画面全体を構成し、ギャラリー内に緊張感を漂わせている。絵はがき的な風景写真が氾濫する昨今、県内の写真文化にも刺激を与えてくれることを期待したい。