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2004年1月28日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

思いのままの自由さ魅力

北沢しょう助展
(2004年1月23日〜2月4日 長岡市・ギャラリー沙蔵)


外山文彦(美術コーディネーター)


 美術には絶対的な基準はなく、その表現や解釈はいわば自由である。北沢しょう助(見附市在住)の絵画をみながらそんなことがふと頭に浮かんだ。
 80点もの絵が並ぶ。色彩の楽しさや表情のある線などそれぞれの面白さがあるが、展全体を貫くテーマ性はなく、むしろ思いのまま表現したという自由さが、イノセンス(天真爛漫)とでもいうべき作家の大きな魅力につながっている。
 多くを占める水彩画は一日で描ききり翌日以降に再度描き足すことはしないという北沢は、日記を書くかのように日々作品を生む。人や鳥などの具体的なモチーフを借りつつも、その日の心の動きを絵画表現の中で追い求めているようだ。時にはクレヨンやパステル、墨なども併用したり、紙を水で濡らして滲みの効果をもたせるなどさまざまな手法を駆使しているが、技巧的な特徴が突出するのを避けるかのように穏やかに効かせており心地よい。
 初個展以来20年以上まとまった発表をしてこなかった作家だが、一昨年の今井美術館での企画展を契機に4回個展を連続させた。展示作品の選択は日々アトリエに山積される作品の中から企画者の手に委ねられるが、その視点の違いが面白い。
 ギャラリー沙蔵の視点となる本展は企画側の主張をあえて強く出さずに、作家の表現を素直に捉え、幅広いままストレートにその魅力を伝えようとの意図のようだ。