n e w s p a p e r
2004年2月18日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

ほんの少し大人の雰囲気も
関谷栄展「あれはなあに2」
(2004年2月19日〜24日 羊画廊)

田代早苗(俳人)

「あれはなあに2」
uNO.030 NO.031 NO.032 NO.033
和紙に墨 各18×14B

 子供は騒がしいばかりではない。考えごとをしているのか、不思議な何かをみつけてしまったのか、時としてしんとおし黙ってしまう。関谷さんの絵をみていたら、ふとそんなことが頭に浮かんできた。
 関谷さんの和紙と墨による作品から落款が消えたのはいつだっただろうか。それは書との決別と同時に、作品の中に「終わり」の句読点を打つのをやめたしるし、成熟し、老成するのを拒む証でもあるような気がしてならなかった。
 それ以来、関谷さんの線は紙の上を奔放に走り回るようになった。いたずらっ子のようにはじけ、落書きそのもののように楽しげに点を打ち、ぐいぐいと延び、ふわふわと滲んでみせたりもする墨の黒。描いている本人の喜びが観ているものにも気持ち良く伝わってくる。それが関谷さんの作品世界だった。
 ところが今回の作品、今までと少し違う。線はこれまでのように大騒ぎをしたりしない。画面を過剰に塗り潰して大暴れすることがなくなっている。しかし絵がつまらなくなったわけではない。シンプルになった、というより子供が少し大人になったような雰囲気。「あれはなあに」と不思議に感ずる対象が外ばかりではなく、自分の心の内にもあることに気付いてしまった子供のように、その部分をもっと掘り下げ関谷さんの作品も大人になってゆくのだろう。
 それとも反動でもっともっと大暴れをみせてくれるのか、分からない。分からないから目が離せない。育ち盛りの子供を見守るように。