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2004年2月25日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

長い歳月が集約される感覚
栗田宏―絵と陶
(2004年2月17日〜29日 新潟絵屋)

越野泉(新潟絵屋運営委員)

「聴く」 鉛筆、紙 87.2×57.2cm 2003年

 能の舞台のような会場。静寂の中から木霊のように響く音。
 栗田宏の絵はとても深い。
 白を基調とした油彩、鉛筆の大作、水彩に加え、陶器が並べられている。作者が自宅の庭で一人で築窯したもので焼いた茶碗、ぐい呑み、小皿等。
 油彩の、何げなく描かれたような線や点、繊細な下地、水彩の微妙な色合いなど、見過ごしてしまいそうな幽(かす)かなものに心を打たれる。
 一昨年の個展は鉛筆の作品が主だったが、今回鉛筆は大作の「聴く」=写真=だけである。長年描き続けられてきたこの絵は、長い歳月が集約されるかのように、多様なものを内包し、見る者の胸にもさまざまな思いを去来させる。
 「雪」は最新の作品で、どこか初々しいとさえいえる心の息吹が伝わってくる。
 「珠洲」の風景は向こうに海が広がる。風が吹き渡る。珠洲焼を愛する作者は何度も珠洲に足を運んだという。
 前回も数点並べられた陶器は、今回は絵と同じ比重で紹介されている。自然の力に支えられた野生児のようなぐい呑みや小皿には迫力と存在感が溢れ、手に取ると、マグマに触れるときめきを感じる。
 このような才能が新潟にあるのが私はうれしい。