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2004年3月2日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

ユニークな切り口が貴重に

笑えるアート展
(2004年2月24日〜3月7日 長岡市・ギャラリーdotONE)


外山文彦(美術コーディネーター)


 画廊企画となる本展の案内には「笑いをテーマにアートは成立するだろうか」とある。県内在住の画家、彫刻家、写真家、現代美術家など24人に、笑いの要素を唯一の条件で、素材や大きさなどは一切不問にして出品依頼したという。
 約30平方メートルの画廊空間での24人展と聞くと、小品主体のこぶりな展示を想起するが、ドアを開けると、いきなり佐藤和行の巨大な立体作品が目にとびこむ。まずは意表をつかれ、中に入ると整然と30点の作品が並んでいる。
 アートはエンターテインメントではないので、その笑いの性質はおのずと異なり興味深い。各作家の取り組み方はさまざまである。
 元来ユーモラスな感覚を併せもつ星野健司は排便模様をモチーフに鉄のオブジェを制作。モチーフのおかしさが造形的な面白さと融合し、笑いを誘う。同じ鉄彫刻でも霜鳥健二は家をかたどった作品の中にどこかズレを生じさせ、星野とは別種の笑いへ繋げようとする。前山忠は1978年制作の版画作品を再提出。あえて26年前の作品を当時の意図とは異なる今回のテーマにぶつけ、新たな視点から照射させ逆に新鮮である。
 「笑う」ではなく「笑えるアート」だという展名に企画者の捻りがある。難しいテーマを掲げられて苦しんだ作品も中にはあるが、アートに対するユニークな切り口は今の時代において貴重であり、さらなる企画の展開を期待したいと思う。