n e w s p a p e r
2004年3月10日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

キラキラと輝く世界を再び
鈴木翁二童話店
(2004年3月12日〜20日 新潟絵屋)

広野力(まんが愛好家)

「ぴちん」 水彩 2002年

  私が鈴木翁二の作品と出合ったのは、青林堂のまんが雑誌「ガロ」であった。私は彼が描く街並み、輝いてはいるが暗い海、そして美しい星空等が好きである。遠くの家々に灯りがともる絵は「あの灯りには幸せと悲しさがいっしょになっている」ことを感じさせてくれる。
 私は昭和47年に北冬書房から出版された「夜行」掲載の「さみしい名前」が好きだ。そこには私が幼いころ過ごした懐かしい風景が広がっている。 
 街にサーカスの唄が流れ、それを火の見櫓で眺めている光地少年。突然知らない「おぢさん」から声をかけられ、言葉をつまらせてうつむく少年。そして「おぢさん」と少年は「おぢさん」の「ラビットスクウタア」に乗り街を走り抜ける。担任の先生や友達との出会い、光地少年がひそかに心をよせる「ようこ」のさみしそうな姿が描かれている。
 やがて二人を乗せた「ラビットスクウタア」は海へと出る。夕日が沈んだ海は暗くさみしい。その海の中に鈴木翁二は少年と「おぢさん」を浮かび上らせる。キラキラと光を放つ中に。そして街に戻ってきた少年と「おぢさん」の満天の星空での別れ。作品はここで終わっている。何十年と時が過ぎてしまった。少年は元気にしているだろうか。
 このたび鈴木翁二が童話集を出版して新潟に音楽とともにやってくるという。この街もキラキラさせてくれるだろう。