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2004年5月4日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

浮遊感を漂わす異質な空間

佐藤郷子 展
(4月28日〜5月6日 長岡市表町2・たつまき堂TMDギャラリー)


外山文彦(美術コーディネーター)
 

 長岡市にあるインポートウェアショップの中。店内奥にあった倉庫スペースを使い、3人の個展を連続(リレー)させる試みが先月中旬より開催中である。白色にペイントされた天井の高いキュービック状の会場は、ニュートラルな展示スペースではなく個性の強烈なものであり、各作家のそこでのアプローチが興味深い。
 シリーズ2番目に登場の佐藤郷子(新潟市)は、この空間と出会い触発されたことを契機に、ここ数年展開している蜉蝣(かげろう)を題材とした作品を軸に、そのインスタレーション化を構想した。
 透明シートに蜉蝣の写真を転写させる。それを大きく船型につなぎ合わせたものを空中に吊し、空間に常設の壁画やガラスブロック壁なども作品の要素に組み入れ呈示していた。素材となるシートのテクスチュアの処理などに工夫がより欲しいが、空間の素のありようをみつめシンプルにかかわった作品は、下から上へ照らす照明の効果も手伝い、浮遊感を漂わせたインスタレーション作品として味わい深い。
 その眼差しは、本展の前の展示作家の手法と対極にあり、リレー展としてのその差異が、場としての空間の特性を浮き彫りにさせる。異質な空間で個展をリレーさせるという、シリーズとしての面白さもそこに浮かびあがる。