■ あーとぴっくす
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画廊に人気のない公園出現
尾関立子展
(2004年5月14日〜25日 羊画廊)
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堀 葉月(画家)
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「forest」エッチング
25.0×25.0B 2002年 |
「うれしい」
つぶやくように言うと、彼女は壁に描き始めた。
床から天井まで突き通すハシゴが、広々と葉を広げた木が、ベニヤの壁の上に描かれてゆく。
尾関立子展を最後に、羊画廊は改装工事に入る。展示のために訪れた彼女はそれを知ると「描いてみたい」と提案した。
尾関さんは東京を拠点に国内外で作品発表を続けている。個展は可能な限り出向いて行き会場の空間を創作する。個展会場の壁に絵を描くことは以前から考えていたが、実現したことはなかったと言う。
筆運びはリズミカルで素早く、ためらいや戸惑いが無い。
いっきに一つモチーフを描き上げると筆を置き、手製の資料集を開く。そこに張り込まれた写真やデッサンに、しばし目を走らせ再び筆を取る。
銅版画の制作でも作品の大小にかかわらず、線は一発勝負で引いてゆく。
「少しずつ描き込んでゆくってできないです」と軽やかに笑う。
「線が死ぬような気がして」と付け加える。
描き続けている“存在への不安”というテーマの重さは、潔い生きた線で描かれることでギリギリのバランスを保ち魅力を放つ。
ゆれるブランコ・ジャングルジム・蝶を入れた金網のオブジェ。
数時間の後、人気のない公園を思わせる異空間が生まれた。
「ああ、楽しかった!」赤く火照った彼女の顔に笑みが広がり、輝いた。
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