n e w s p a p e r
2004年5月31日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

生きている喜び 温かく表現

冨長敦也展
(2004年6月2日〜10日 新潟絵屋)


山下 透(アートNPO推進ネットワーク代表理事)
 
「横になる人」
能勢黒御影石 2001年

 冨長敦也の彫刻のテーマは常に人間である。大理石や黒御影石といった素材の性質と人間の本質を探究、その根源に迫るばかりの表現は見るものを魅了する。作家が触れ、削り、描く石塊のなかから立ち現れてくる像は、プリミティブに見えながら実は現代のわれわれ自身なのだ。その人間像のいずれもが祈りのかたちをしている。根底に流れるのは、生きて今在ることへの喜びと人間賛歌の精神に違いない。今回出品されるのは黒御影石の立体と作家が足で歩いて見つけた石によるアッサンブラージュ約20点であるが、静かで温かみのある作品ばかりだ。
 金沢美術工芸大学および大学院で絵画彫刻で専攻した後、東京・大阪を中心に発表してきた。新潟では2001年の十日町石彫シンポジウムに参加したが、個展は初めて。
 今回の展示は、東京に拠点を置く「アートNPO推進ネットワーク」による企画。市民派コレクターを中心に、画廊などの商業ベースとは一味違う優れた若手作家紹介展やコレクション展など草の根型アート市民運動を展開している団体。新潟絵屋がNPO型画廊的活動を行い、美術を愛する市民たちに支持されていることを知り、初の共同企画となった。私たちアートNPOも“日常生活のなかの心の豊かさ実現に向けて”を掲げている。地域は違うが志を同じくする者として、この試みを手始めに今後もこのようなコラボレーションを続けていきたい。