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2004年6月11日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

新局面に入った参加型アート

佐藤秀治展〜未来社会管理促進計画
(2004年6月3日〜20日 栃尾市美術館市民ギャラリー)


外山文彦(美術コーディネーター)
 

 自身の作品に鑑賞者が行為を加えるなど、何らかの形で他者がかかわる参加型作品を近年展開している佐藤秀治(栃尾市)の新作展。2年ぶりの個展となる本展では、現在に立脚しながらも未来を見据えた作家自身の考えを示すことが試まれ、監視社会、クローン問題、ユビキタス社会など、社会性をもった7つのテーマを取り上げ、おのおの問いかける作品を1点ずつ見取図風に展示している。
 鏡、マグネットシート、マネキンなどさまざまな素材による小作品が一列に並ぶ。それぞれにコメントも付記されるが、作者自身の回答は積極的に用意はされず、未来にむけて深刻化するだろう社会問題の投げ掛けを通じた想像力の刺激で、観客の『視考』を浮き彫りにする形をとる。佐藤のアーティストとしての今日感もそこにあり、参加型アートとして新しい局面に入ったようだ。
 今回の作品展は性格としては断片的な提示となるが、興味深いシビアな論点が内包される。個々のテーマをさらに深く切り込んだ展開も今後期待したいと思う。
 なお、本展の案内はがき=写真=は、20代の女性デザイナーをあえて指名、好きにデザインすることを唯一の条件に制作を依頼したという。結果、作家として今まで培ってきた味が全くないものが意図的に出来上がる。他者がかかわることで(見えなかったものを)見せる佐藤の企てが、ここにもあるといえようか。