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2000年1月10日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

展覧会の新鮮な可能性暗示
第2回リレーアート展 LOVE-MOVE
(12月5日〜12日 新潟市・万代シテイ「リターナ」)

大倉宏(美術評論家)

高橋一裕
笠原賢悟
真島裕之
上田浩子
櫻井嫌一郎
伊藤純一
星野晃作

 参加していたのは、新潟で活動する2、30歳代のデザイナー、建築家、映像作家、コピーライターたち。
 会場に足を踏み入れると、まず合板で組み立てられたトンネルがある(会場を構成した伊藤純一の作)。出口側が絞られるように狭まった通路を抜けると各人の作品が展示されているが、一画には共同制作による絵画があり、また会場には畳の代わりに割り箸を敷き詰めた1坪の茶席(?)がある(これも伊藤の作)。来場者参加の共同制作コーナーがあり、また日を分けて各出品者のパフォーマンスが行われ、最終日には、照明を落とした会場の床一面が赤い風船に埋められた。
 美術評的に言うと「グループ展」ということになるが、私の知っているグループ展とはなにか違う感じ。個々の作品を単独の美術表現として見れば、どれもむしろ物足りない印象を受ける。が、この会場では逆にそれがいい、と感じられる。
 美術のグループ展が、各自完結した表現の集合だとすれば、ここでは未完結の表現がそれぞれのくぼみに歯車のように他を迎えいれ、柔らかく広がる場を作り出している。ばらばらなまま、でもつながっていこうとする心地が、ひとつの声のある空間を生み出していると言ったらいいだろうか。
 展覧会という形式の新鮮な可能性を暗示するような、印象に残る催しだった。