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2004年7月26日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

触って描いて身近に楽しむ

「彫刻と遊ぼう」展
(2004年7月31日〜9月7日 南魚六日町・トミオカホワイト美術館)


星野健司(彫刻家)
 

藤巻秀正「雪わらべ」

 「ヘンリー・ムーアは常に実験的な芸術家で、フォームの発明についてはすこぶる大胆不敵であった。獣骨のなかに山岳を見たり、人間の胸部に深い洞穴を見たりすることがあるが、それもすべての容貌が有機的で、常に自然の領土にある原形へと由来をたどることができるのだ」(H・リード著「若い画家への手紙」新潮社)
 この文は美術批評家ハーバート・リードがムーアの彫刻の秘密について述べている下りです。私は入道雲のわき立つ真夏の自然の中に、ひっそりと佇む彫像たちの事を思い浮かべる時、いつもリードのこの文章が浮かんでくるのです。
 八海山の山麓に在るトミオカホワイト美術館の夏の企画は「彫刻と遊ぼう―触ってみよう・描いてみよう―」と題された8人の彫刻家(漆山昌志・斎藤道男・星野健司・霜鳥健二・田原良作・野上公平・藤巻秀正・宮沢光造)による展覧会です。夏休みに家族で訪れ、彫刻芸術をより身近に楽しんでもらいたいという企画です。特に子供たちは、難解な芸術美学とは関係なく、彫刻に「触って」みて「描いて」みて発見する。きっと愉快な芸術体験を味わうことができるでしょう。
 雄大な八海山の懐。トミオカホワイトの幽玄と静謐が彫刻を満す時刻。「自然の領土にある原形へと由来をたどる」冒険の旅が始まります。クエスト・フォー・スカラプチャー。彫刻には人の心をドキドキと鼓舞する働きがあるよに思われます。きっと楽しい夏休みになることでしょう。