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2004年10月11日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

蔵空間で味わう無限の世界

上野憲男展「青の周辺から」
(2004年9月29日〜10月17日 柏崎市学校町3・ギャラリー十三代目長兵衛)


外山文彦(美術コーディネーター)
 
「水の中のノート」油彩

 会場は築200年以上もの蔵を改装したギャラリー。今春開館し、絵画、陶芸、現代アートなど、ジャンルにこだわらずに多様な表現を次々に紹介している。蔵空間のもつ包容力が生かされて、その多様さが、通して味わいのある企画の展開に繋がっており、注目されるアートスポットである。今回は栃木県那須町在住の現代作家・上野憲男の最新作を近作とともに展示している。
 油彩と水彩、計25点の作品が並ぶが、すべてに青色が効果的に使われる。深みのある青や、くすんだブルーグレー、明度差のある数々のブルーが巧みに使い分けられ、象徴的な形や記号、アルファベット、数式など、メモのようなドローイングの線と交錯し、オイルチョークを活用した繊細なタッチとさながら浮遊するかのように柔らかく構成される。単にモチーフの要素としてではなく、わずかな線や色のからみあいの反復と連鎖によって、どこか遠い空間をも暗示しているような無限の広がりを感じさせ興味深い。それは詩を視覚的にみるかのようでもあり、個々に付けられた題名も凝ったもので、観客の詩的な想像力をより刺激する。
 作家も多分に意識したという、蔵のギャラリー空間とのコンビネーションは本展でも存分に生きており、独特の深みを持つブルーを基調とした上野の魅力が蔵のなかに包まれ、しっとりと呼吸しているような雰囲気が印象的であった。