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2004年10月27日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

見る者を打ちのめす力内在

第1回「笑えるアート」チャンピオン関根哲男展
(2004年10月19日〜31日 長岡市・ギャラリーdot ONE)


佐藤秀治(美術家)
primordial Life 原生


 今回の催しは、2月実施の当画廊企画「笑えるアート」展によって選ばれた者に贈られた副賞(個展開催権)に基づくものである。
 「笑い」表現の苦手な日本人、奥ゆかしさと勤勉・勤労・我慢強さの新潟人気質を相手に画廊が投げかけた一見不向きなテーマであった。参加者の多くは一様に四苦八苦したあげく撃沈した。その中で唯一あっけらかんとした笑いで支持を得たのが関根の「赤フン」であった。赤布と木材の関根作品は、これまでも繰り返し発表されてきたものであるが、本展はそれと異なる。十数年来、表現のベースとして追究している「原生」と新シリーズ「残像」を中心に、圧巻200号強の巨大横パネル8点を中心に小品10点の充実した展となってる。
 概括的に関根の今日の仕事を言い表そうとするならば、まず圧倒的な数量の痕跡が生み出す力の美に魅せられ、その制作プロセスを解き明かしたくなる衝動に駆られる。その終着は「根気強く、一途な行為」である。関根が制作に費やす時間は超人的で、容易に追体験できるものではなく鑑賞側に優しくはない。そこにはカウントを諦めさせ鑑賞者を打ちのめす力が秘められている。ぶらり鑑賞では強力なパンチを食らう。読み取る側との勝負の場がある。心してご鑑賞あれ。
 「笑い」をテーマに元気な画廊が仕掛ける第2回「笑えるアート」展の企画も同時に始動した。