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2004年11月2日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

銅板使い新しいかたち模索

真木未波展 ―金属〈態〉としての―
(2004年10月30日〜11月7日 ギャラリー炎舎)


田代早苗(俳人)


 作家って何なのだろう? 只ひたすらにものを作り続けてさえいれば、それで作家だといえるのだろうか。しかし本当の作家とは自らが作り出したかたちを敢えて壊していきながら、新しいかたちを模索し続けるものなのではないのだろうか。
 真木未波氏の銅板を使った新作展をみていると、そんな事に思いを巡らされる。両親とも陶芸家という環境に生まれ、早くから土で作品を製作してきたこの若い作家にとって「ものを作る」というのはごく当たり前で自然な行為であることは想像に難くない。そんな状況の中「自分にとって『ものづくり』とは何なのだろう」と立ち止まって考えるきっかけを与えたのが傍らにあった銅板だったのだろう。
 昨年の12月、陶芸作品を主に取り扱うこのギャラリーで「贈与のカタチ」と題して“包装も作家自身が作る”という大変面白い企画展が開催された。陶芸作家たちがそれぞれに趣向を凝らし紙や木でラッピングしたり箱を作ったりしていたなか、未波氏は表情豊かな銅板の箱に自身の作品を収めた。今回は一歩進めて作品として独立させたもの。写真の作品、名前はない。深海の底を蠢く未知の生物にも揺れる水草にもみえる不思議なかたち。若いながらも今まで築いてきた陶芸作家としての経験を白紙に戻して素材に向かい合い、金属の感触を存分に楽しんだのだろう。みていると心の深い部分が揺さぶられ、ざわめいてくる。