■ あーとぴっくす
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叙情で切り取る西洋の風景
松川孝子展
(2004年11月2日〜10日 新潟絵屋)
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藤島俊会(美術評論家)
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「森で」ミクストメディア、和紙
50×80cm 2004年 |
作家が使っている紙は、鹿児島に住む老夫婦が3年前、米寿を迎えたので引退と同時に生産をやめた蒲生和紙である。後継者がいなくて手間暇かけても割に合わない、つまり自然はこのような形でも人間から遠ざかりつつある。それだけ最後の和紙に対する作者の想いも格別であるに違いない。
今回は「森」シリーズと題して、エコロジカルなテーマを思わせるさわやかな作品が生み出された。小枝が絡まる太い樹木が横長の画面によって切り取られる。あるいは細い木枝が幾何学的に鋭く伸びて交差する。しかしそれはまさに抽象空間に転換しようとする瞬間の緊迫感でもある。その間に濃密な空気が煙幕のように漂っている。浮遊する細かな短冊状の小片は作者の奥底で動く感情の現れかもしれない。作品を見る人は、あたかも森林で呼吸をするような感覚にとらわれる。菱田春草の屏風「落葉」を思わせ、意外に日本的な画面作りがみられる。
作品は版画をベースに油彩を施し、頑丈な表面に仕上げている。和紙自体も強靭な繊維質を持っているが、松川の取り組みはそれに負けない画面作りをしている。
さて松川にとって「森」は、30年近く住んでいるウィーンの森であろう。その森を横長に切り取る、いわば西洋の風景を日本の叙情で切り取った。以前の抽象的な画面とは異なり、前回の母子展あたりから叙情性を増してきたように思う。新潟市生まれ。
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