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2004年11月24日 新潟日報 掲載

あーとぴっくす
 

「箱」に凝縮 自由なアイデア

ボックスアート展
(2004年11月13日〜28日 柏崎市学校町3・ギャラリー十三代目長兵衛)


外山文彦(美術コーディネーター)


 56個のアート化された箱が並んでいる。
 30センチ×30センチ、奥行き8センチの木の箱を使うことを条件とし、そのひとつの箱から発想して自由に表現したもの。ギャラリーの呼びかけに応じた県内外の56人が制作、出品した=写真=。画家、現代美術家、工芸作家、写真家、建築家、絵本作家などで、その年齢層も含めてきわめて幅広く、展を特徴づけている。
 日頃の大作のレプリカのような完成度の高い作品、箱を逆手にとってユーモラスに仕上げた作品、来場者が作品に関わることを即す参加型作品など、素材や手法、箱へのアプローチも含めて多種多様。普段の制作とは全く違う一面を見せる作家など、意外な面白さに出会うのもこの種の企画ならではのもの。柔らかな発想が光り、小さなサイズに凝縮して完結した作品がぎっしりと展示される。バラエティーに富んだ小気味表現が、蔵を改装した温かい画廊空間のなかに溢れていて、とても楽しい雰囲気を醸し出している。
 アートは楽しいものであることを前提とした企画といえよう。中越地震で周辺地域は膨大な損害を受けているなかで、アートによって心が躍動しその創作エネルギーから元気づけられる効果もあるようだ。このようなとき美術の立場から何が可能か、ちまたでは美術家のチャリティ展が緊急開催されるなどの動きが見られるが、それとは別の角度からの発信にもなっている。意義深いこととして、併せて注目しておきたい。